19ヶ月目:宗教と緩和ケア、学生教育

宗教と終末期のケア

現在の勤務先は患者さんの9割が白人英国人なので、病院で出会う宗教は主にプロテスタントだ。緩和ケアに関わった患者さんで、驚くほどご本人も家族も穏やかだなという印象の人が2人いた。

ひとりは、50代のかなり進行した状況で診断された乳がんの患者さんで、まだティーンエイジャーの子どもが3人いた。私はご本人がまだ元気だった頃に病棟で担当していた。おしゃべりが大好きな人で、こどもたちのためにまだまだ長生きしたいと仰っていた。次に会ったのは病状が急激に悪化してICUに入院したときだった。よくある名前だったので、彼女の名前を緩和ケア医/ICUのリストに発見したときはまさかと思ったが、残念ながら彼女だった。緩和ケア医からの夫と子どもたちへの説明に同席させてもらった。子どもたちは驚くほど穏やかで談笑をしていて、もしかしてまだ死が理解できないんだろうかとも思ったが、どうも患者さんの夫によると信仰が関係しているようだった。「私たちは敬虔なクリスチャンで、死は肉体の死にすぎず、妻の魂はずっと私たちと共にあるのだと子どもにもしっかり教えています」と言っていた。

もうひとりは70代の乳がんの患者さんで、何十年も前に治療した乳がんの小脳転移で再発が判明した。夫とは50年も連れ添っているらしいのに、病室に行くといつも手を握り合って、一言いうごとに見つめあって、まるで新婚さんみたいだった。がんが関係あるのかは知らないが(イギリスは日本よりカウンセリングが一般的なので、がんのような大病を患ったことがカップル関係にもたらす変化へのカウンセリングも進んでいる)、教会主導のカップルカウンセリングを受けてからずっとこんな感じなのだそう。この夫婦も非常に敬虔なクリスチャンで、もちろん死は悲しいけれど我々はまた結ばれるのでそれまでの辛抱というような考えを持っている人たちだった。愛する人が死に行く中で、こういう信仰がもつ癒しの力は計り知れないなと思った。

現在の勤務先にはChaplain(聖職者)が3人いて、2人はキリスト教の牧師で、1人は仏教徒だ。

この頃はイングランドでは敬虔なキリスト教徒というのは少なく、聞かれるとクリスチャンと答えるけれども日頃は信仰心を持っていないし教会にも行かない、クリスマスやイースターのお祝いだけはする、というような人が多い。(日本で「海外で自分は無宗教だというのは危険」というような言論が流布しているけれど、イングランドに限ってはそんなことはない。これは都会・田舎や教育レベルに関わらず病院で医師/患者として会ったご高齢の患者さんを見ていてもそうだし、友達の両親の話を聞いてもそうだし、大学などで会った友達や同い年くらいの人たちに至っては殊更そうである。)

なので、Chaplainとお話ししますか?と聞くと、熱烈なYesは意外と少なく、「信仰心はないけどお話しだけならリラックスできるかも」と控えめに希望する人もいれば、信仰心が全くないのでChaplainは不要だと一蹴する人もいる。こういう信仰心が全くない人にとって強い支えとなるのが、意外にも仏教徒のChaplainだ(お坊さん、と呼ぶべきだろうか?)。リファラルを書く我々からは、このお坊さんは「無宗教枠」の存在になっている。

当院のお坊さんは坊主で強面で眼光鋭く、雰囲気はというとパブでドラッグを捌いてそうな、そういう感じだ。あんまり笑わないし同僚の牧師が放つ穏やかな雰囲気とは対照的に異彩を放っている。日本育ちが想像するお坊さんの雰囲気とはだいぶ違うかもしれない。こういう人なので、特に若年〜中年男性に大人気だ。

イギリスでは今、仏教が着実に人気を増している。大学にいた時に、私が哲学科にいるからそう感じるのかとも思っていたが(パーフィットの哲学と親和性が高いと友達が話していた)、大学の外でもこころの平穏が欲しい若い人たちの間で仏教に興味がある人がまあまあいるように感じる。友達の彼氏のイギリス人ミュージシャンもクリスチャンから改宗した仏教徒で、毎朝30分瞑想をしている。瞑想、ヨガ(は仏教じゃないと思うけど、遠くの国のmindfulnessのプラクティスという点で似ている)、など社会的に関心の高まっている・趣味とする人が多い事柄とも相性が良いのもまた、仏教への関心が高まっている一因かもしれない。

緩和ケア医によると、イングランドで少なくともその先生が会ったことのある仏教徒は、死について非常にオープンに話す・病気のかなり序盤から死を受け入れる傾向にあるのだそう。イングランドでは生まれつきの仏教徒は珍しく、多くの人が進んで改宗した仏教徒である(みんなお坊さんレベルに仏教を知っている・信仰している)というのがその理由かもしれない。

私は日本育ちながら仏教のことは全然知らないので、何か本を読もうと思いつつ5年くらい経ってしまった。あと5年くらいの間に本を読みたいと思う。何か苦しむ患者さんにかける言葉のヒントが見つかるかもしれない。それから、NHSで働き始めた年の冬のA&Eでは、仕事があまりにも辛かったので、自分にも信仰があればいいのになあと思う時が何度もあった。イギリスでは特に若い女性は、こういう心境になったとき、水晶や誕生石などのペンダントや指輪を買って慰めにすることがあるらしい。「自分にはこのお守りがあるから絶対に大丈夫」という形で自分を鼓舞したり不安を追いやったりする効果があるようだ。何か救いが欲しい時、でも既存の確立された宗教を学ぶ元気はないとき、怪しい新興宗教に連れていかれる前に皆さんも宝石屋さんに行ってほしい。

学生教育

イギリスの医学部は5年制だ。一部大学では6年制を取っており別途研究の資格を取得できるほか、編入生(一度別の学部を卒業した人たち)だと4年で医師になれるが、基本的には医学部は5年だ。

イギリスでは3年生から病院研修が始まる(日本では6年制で、5年生から)。学生がローテーションすることになっている科では、コンサルタントのほか、私のような下っ端のSHOでもインフォーマルな形で教育に関わることになる。

(もちろんフォーマルな教育への関わりもある。どの病院でもフォーマルな形での教育への参加がSHOには推奨されているので、OSCEの模擬患者・試験官をしたり、小グループを率いてBedside teachingを行ったりすることができる。その後にはフィードバックを得られるので、それを自分のポートフォリオに添付して、自分の業績とすることができる。イギリスで働き始める人で、IMTやCSTに応募する予定のある人は、積極的にやったほうがいいと思う。GPや放射線科や精神科を考えている人は不要。)

腫瘍内科には4年生の学生がたくさん回ってくるので、特に2月中旬からは、ほぼ毎日誰かの相手をしていた。午前中だけの関わりなのだが、それでも学生それぞれの個性や知識量の違いがはっきりとわかるので、思っていたより楽しく、今日の学生さんはどんな人だろうと毎日楽しみにしている。

学生は回診について回るほか、時間があれば患者さんをclerkingしてそれを私に発表し、私は以下のような採点表をつけて学生の学校にメールで送る。他には、学生が希望すれば退院時サマリーや回診カルテを書いてもらうこともある。

この採点表は、私の名前・ポジションを記載するところから始まる。丁寧な学生さんだと、名前・ポジションに加えてこのアセスメント表全体を私に口頭で確認して仕上げて、確認メールだけを私に送ってくる(アセスメントを放置されて送ってもらえない、みたいなトラブルを過去に経験したのかもしれない)。名前・ポジションだけを記載して送ってくる人もいれば、全く何も記載せず送ってくる人もいる。このへんも性格の違いが出ていて面白い。

GPへの退院時レターについては、「前にやったことがある」といってまるでFY1かのようにさっさと仕上げる人もいれば、初めてだからと3時間くらいかけても仕上げられなくて後日完成品を持ってくる人や、レターを書くのが初めてで書き出しを「いつもお世話になっております」と日本風にする人なんかがいて、それも良い。私もイギリスで働き始めた当初は「いつもお世話になっております」的な文言で手紙を始めていたので、イギリス育ちでも退院時レターを書いたことがない人は同じ間違いをするんだなと新たな発見があった(別に書いても良いけど、誰もやってないのでちょっと変わった医者だなと思われるかもしれない)。

私が業務中なのに学生が図々しく色々な質問をしてきて業務が滞ることもあったし(でも熱心なのは良いことなので喜んで教えて少し残業した;どうもこの学生は前日の学生からの前情報で、私を親切で教育熱心なSHOと思い込んでいたらしい)、逆に何を聞いても「別に」という感じでやる気のなさが行動からも雰囲気からも言葉からも溢れ出ているような学生もいた。やることないからもう好きにしていいよ、と言った場合に、喜んで病棟を去る学生もいれば、その前に…とたくさん質問をしたり患者さんのカルテを全部読み始めたりする学生もいた。腫瘍内科的救急疾患について尋ねると、すらすらと暗誦して今すぐにでもFY1として働けそうな人もいれば、うーんと悩んで全然答えられない人もいた。最初の方にあった学生は皆とても優秀だったので、イギリスの学生は質が高いなと驚いていたのだが、しばらくいろんな人に会っていると、本当に学生もいろいろだなとわかって少し安心した。

この半年くらいの新出単語

このブログは日記も兼ねているので、あとで読み返して「ああこんな表現や単語を目新しく感じていたんだなあ」と懐かしく振り返りたい。

ちなみに私はBullet Journalメソッドの大ファンで、もう5年くらいは既製品のスケジュール帳ではなくドット柄のモレスキンをスケジュール手帳として(スマホのカレンダーと並行して)使っていて、各ページの左下に線を引いて英語とイタリア語の新出語彙・表現をかくだけの欄を設けている。本気で語学を勉強している人は別途単語帳とかAnkiアプリなんかを使ったほうがいいと思うのだが、仕事の片手間にやる分には、このくらいがちょうどいいし、あえて別のノートを使わないことで振り返りも手軽なのでおすすめだ。

abut: be next to or have a common boundary with. “A pseudoaneurysm abutting nephrostomy”

Blimey!: God blinded me の略だそうで、患者さんもスタッフもびっくりした時に結構使っている。イギリス英語。私も驚いた時に咄嗟にBlimey!と言えるようになりたい。

stroppy:bad-tempered & argumentative.ストラッピーと聞こえて、話の雰囲気から言葉の意味は理解したものの「ふーんstrappyにそんな意味があるんだなあ」と思っていたらstroppyだった。イギリス英語。

cross: annoyed. “He was so cross!” これもよく聞く。イギリス英語。

specious: superficially plausible but actually wrong

test the water: to try to find out what reaction an action or idea will get before you do it.

in a pickle: in a difficult situation

wired: nervous, edge, tense

petrified: frightened

not pulling his weight

give time to compose oneself

bread & butter

no longer amenable to chemotherapy; cardiac failure not amenable to medical treatment

uncanny

life expectancy would still most likely be measured in months./ his prognosis is likley to be only measured in terms of months.

IMTインタビュー (19ヶ月目)

IMTインタビューが終わった。Oriel(トレーニングプログラムに応募するためのウェブサイト)の応募書類提出締切が11月、Longlistingが12月初旬、Shortlistingが12月中旬、Interview Bookingが12月下旬で、1月末にインタビューを受けた。

今年は4:1(1つのポジションに4人が応募)で過去最高の倍率を記録したそうで、希望地に行きたいなら大変なのはもちろん、「全英どこでもいいからポストが欲しい」という人でも結構大変な年になったと思う。具体的にいうと、6174人の応募者がおり、3682人がインタビューにこぎつけた。この後マッチングを経て、1603人がポストに就くことができる。

まずShortlistingで2492人が選考から落ちた。運よくインタビューを受けられてもAppointabilityを満たさず落とされた人が何人かいたみたいだ。それからインタビュー数週間前まで知らなかったのだが、Shortlistingに使われる書類審査の点数(評価項目は公式サイトを参照)と、インタビューの点数とは全く別なので、書類審査の点が良くてもインタビューの準備はがんばらなくてはならない。

2024年に応募した人たちの書類選考の点数

Interview Bookingは千人規模の応募者が一斉にサイトにアクセスする関係で、何度もエラーが表示され、予約に辿り着くまでが一苦労だった。運がいいと2月中旬の日程で予約できるが、運が悪いと1月初旬の日付しか選択できない。なので、最悪の場合に備えて12月初めくらいから練習を開始するのがいいと思う。

私が練習に使ったのは、主に以下の3つ:

Medibuddyは12月初旬に購読開始していたのだが、1月の第一週目にストがあるからその時にやろうと思って全くやる気が出ず、結局ストの時期もお正月気分でダラダラと過ごしてしまったため、1月第二週くらいに焦って詰め込みを開始した(直前まで先延ばしにするいつものパターンで反省している)。

1月第一週の時期にイギリス日本人医師の会で会ったFY2にOptimise Interviewsを勧められたので、購読開始し、模試を受けた。

あとは、同僚・Optimise Interviewsのチャットグループの参加者たちとオンラインでひたすら練習を繰り返したほか、仲良しのレジストラ2名、IMT1名、そしてコンサルタント1名にも実際の試験形式でインタビューの練習をしてもらった。雰囲気はPLAB2準備のあの感じだ。

インタビュー形式は今年から微妙にフォーマットが変わって、

  1. 2 min presentation + 4 min Q&A
  2. Clinical scenario + 7 min Q&A + 1 min handover
  3. Ethical scenario

だった。2分間のプレゼンテーションが新しいようだ。当日は原稿を印刷した紙をガイドとして手元に持っていてもいいらしいのだが、私は1分50秒の原稿を丸暗記した。Medibuddyは2分間のプレゼンテーション用意にとても有用だったほか、問題が多いのも良い点だと思う。でも高得点を目指すなら、高得点に至るコツが詰め込んであるのでOptimise Interviewsの方がいいかもしれない。

部屋のset upで気をつけたのは、下記の項目:

  • 安定したインターネット
  • 事前のコネクションテスト
  • 電球の位置(めがねに反射しないか、自分の影と被らないか)
  • カメラの位置(目線の高さにくるようにラップトップを書見台においた、本番はできるだけカメラを見て話した、自分が画面の中心にくるように座った)
  • 部屋の掃除(インタビュー前に部屋をぐるりと映すように求められる)

部屋は別に汚くてもいいけれどたくさんのオーディエンスに散らかった部屋をみられるのはちょっと恥ずかしいかもしれない。本番はスーツを着て臨んだ。

特に1のセクションは自分の素質を具体例を用いてバックアップするのが大事だそうで、私は使いまわせる複数のケース(例えば、ペニシリンアレルギーの人にペニシリン系抗菌薬を処方してしまった、というケースならば、「失敗したこと」にも「クリニカルガバナンス」にも「コミュニケーションエラー」にも使える)を用意していたにもかかわらず、当日は緊張してどれも具体例を出さないまま終わってしまった。クリニカルは想定の範囲内のケースだったので良かったが、倫理は想定していない上に個人的には倫理的問題とも呼べない質問だったので、とても残念だ。倫理が普通の倫理問題だったらもう少し順位が高かったと思うので、インタビューのスコアは本当に運次第なところがある。

CVをPersonal Specificationと結びつけて話し、自分がすばらしいIMTになれることをいかにアピールするか、というのがインタビューの目的なので、それに特化した練習をする必要があると思う。このへんもOIが詳しい。

緊張のあまり頭が真っ白になりつつベラベラ口だけが動いて、自分はこんなに英語が話せるのかとびっくりした。

今週結果が返ってきて、70/80点、順位は1300番台だった。1点の違いが大きな順位差となってしまうのが、この棒グラフをみるとわかると思う。得意の倫理で得点率が低かったが、面接で倫理問題として問われた問題は全然倫理問題じゃなかったので仕方ない。上位39%で、悪くはないがこれだとロンドンは難しいかなという順位なので(ロンドンに行きたいなら1000ー1200番台まで)、ロンドンもアプライしつつオックスフォードのdeanaryの病院になりそうだなと思っている。

OIのレジストラいわく、「地理的な環境がプライオリティなら、1500位より順位が高ければロンドン以外ならどこでも入れる。去年は1600のポストしかなかったのに2300位の受験生がポジションを得たので、まあまあの人数がIMT以外のことをすることに決めたことが推測できる。」らしい。どうも、IMTの他に麻酔科や放射線科やGPにも並行して出願している人たちがまあまあいるようで、蓋を開けてみると思ったよりいいポストに就けることが多いらしい。運が良ければロンドン、悪くてもオックスフォードには戻れそうでよかった。

これから1ヶ月後の締め切りまでに、ロンドン、テームズバリー、ケントサリーサセックス、そしてセヴァンの地域のトレーニングプログラム(全部で400件近くある)を一つ一つ順位付けして提出する作業が待っている。私は住みたい地域限定なのでこの数だが、全英どこでもいいからトレーニングポストが欲しい人は1600件を地道に並べる作業で気が遠くなっていることだろう。私にとってはトレーニング内容より病院の地理的な条件が優先事項なので、エクセル上で地理的な条件に合わせて色をつけて、複数のポストをまとめてブロックとして順位決めすることにした。新生活を想って少しわくわくする。

右上の「英国臨床留学の最新情報」にいくつか病院評価を調べられるサイトを追加した。CQCがざっと見通せて一番使い勝手が良いかもしれない。


年々うなぎ登りのIMTの倍率や、PA拡大に伴い、医学部を卒業後に臨床以外の道を選ばざるを得ない人がどんどん増えていくことが予想されていて、多くの医師の嘆きがRedditやTwitterに溢れている。医師の海外流出もどんどん加速しそうだ(ちなみにGPにはオーストラリアのほかカナダも人気らしい、QOLがよく給料もうんと良いのだとか)。

残念ながらPA・AAはGMCによって管理されることになってしまったので、今後もますます医師とPA・AAとの違いは曖昧になっていきそうな予感がする。医師不足と言いながら医師のトレーニングポストは増やさないでPAを増やしている政府には本当にがっかりする。

Physician Associates “Noctors”

この記事を書いた時から、医師とPhysician Associates (PA) / Anaesthesia Associates (AA) との対立はさらに深刻さを増している。あまりの理不尽に医学部志望者が減る始末である。このブログにはイギリスで臨床医として働く上で良いことも悪いことも書いているが、今回の話はこれまでに書き散らしたNHSの悪いところを凌駕する内容なので、心して読んでほしい。問題があまりに山積していてどこから書いたら良いかわからないくらいで、読みづらいところもあり申し訳ないが、英国で臨床に従事することを考えている医師には必読の内容だと思う。英国で患者さんになる予定のある人も自分の身を守るためにぜひ読んで欲しい。できるだけツイッターから引っ張ってきた医師たちの証言を載せるようにした。

  1. Physician Associates (PA)とは
    1. 政府の医療コスト削減策
    2. RCGPの見方
  2. PAの現状
    1. Undifferentiated Patientsを診察する危険なPA
    2. 自らを医師と詐称するPA
    3. 不法に処方を行うが罰されないPA
    4. 医師の手技や教育機会や就労機会を奪うPA
    5. False Equivalencyに基づいて能力以上のポジションに就くPA
    6. 規制に向けて
  3. 若手医師の嘆き
  4. まとめ

Physician Associates (PA)とは

英国医学会 (Royal College of Physicians) はPAを以下のように説明している:


PAは、コンサルタントまたはGPの指導のもと、多職種チームの一員として働くhealthcare professionalsで、一次、二次、およびコミュニティケアの環境で患者にケアを提供します。PAは、政府のMedical associate professions(MAPs)グループの一部であり、イギリスで2003年から働いています。

Who are physician associates?

PAは3年制の理系学部を卒業したのちに、2年制のPA修士課程を修了することで得られる資格だ(無資格で働いているPAもいる)。AAはそれの麻酔科に特化した業種の人だちだと思ってほしい。

政府の医療コスト削減策

現在PAやAAが大幅に増えているのは国の政策だ。

NHS Long Term Workforce Plan は、パンデミックからいまだに立ち直れておらずWaiting listが伸び続けるNHSを建て直す策として考案されたもので、そこにはPA/AAの積極的な活用が明記されている。

国が特に推進しているのはPAのGP surgeryでの雇用拡大・AAの麻酔科での雇用拡大で、現在はなんとPAをGPにする案まで検討されている。医学部を出ていない人を医師にするという前代未聞の政策に医師もACP(Advanced Care Practitioner – 看護師出身で特定分野において更なる教育を受けた人たちで、医師同様、PAより勉強期間も実践期間も長く知識もある)も大激怒しているが、国の政策なのでこのまま実施に至りそうな気がしている。

ACP/PA/AAで仕事を回す方がコストが安いので今後NHSは主にACP/PA/AAで回されて、医師の診察を受けたい人はプライベートの病院に行かなくてはならないようになるかもしれないと言われている。歯科医療はその好例で、1990年代には6%だったプライベートの歯科医院は、NHS資金の減少で今や全体の75%にまで膨れ上がっており、金銭的にある程度余裕のある人はプライベートの歯科にかかるようになっている(これは別の記事で触れたのでそちらを参照してほしい)。

RCGPの見方

驚くことに、RCGP(Royal College of General Practitioners);英国GP学会は、PA拡大に賛成しているらしい。RCGPのトップの一人は息子がPAらしく、利益相反もありそうだ。RCGPとは裏腹に、一般のGPたちはPAに反対する声が大きい仕事も奪われているので当然だろうが、RCGPがメンバーである一般のGPたちの総意を反映していないと怒っている。GP不足にも関わらず、PAのせいでGPが仕事にありつけないと嘆いているのがにわかには信じられない。「PAは医師を置換するための存在ではない」という言葉の空虚さをおもう。

PAの現状

現状PAには規制もRegistryもない。

先ほどPAは2年の修士だと説明したが、実は資格がなくてもPAになれるようだ。ちなみにPA課程に入学するのに必要な成績は医学部のそれとは難易度が天と地ほど違うし、修士中の試験と最後に受ける認定試験は誰も落ちない試験で、合格基準は正答率40%以上という試験の意味があるのか謎な代物で、合格率100%だそうだ。これを指摘すると「医師はエリート主義だ」と反論するPAがいるが、難易度の高い試験を(入試から卒業までずっと)くぐり抜け続けた学生が5-6年間かけて医学を学んだ結果と、平凡な学力の学生が誰も落ちない試験を受けて2年間で“医学を学んだ”結果が同じだと本気で信じられる人はどうかしていると思う。

PAは一応、医師の監督下で働くことになっているのだが、それは守られていないことが多い。

Undifferentiated Patientsを診察する危険なPA

すでに割と単純な症例でのPAによる重大な医療事故が複数報告されている。特に有名なのは、若い女性の深部静脈血栓が2度見逃されて死亡に至った例だ。呼吸苦とふくらはぎ痛でGPを受診した女性に、PAは一度目は「Long COVID+アキレス腱痛」という診断をつけ痛み止めで帰宅とした。二度目の受診時には「不安症」という診断でβブロッカーを処方して帰宅とし、その数日後に女性は肺塞栓症で死亡した。呼吸苦+ふくらはぎ痛で肺塞栓症を考慮するのは医学部生でも当たり前の知識だと思うがPAはこれを二度も見逃してしまった。女性は医師の診察を受けたと亡くなるまでずっと思っていたそうだが(メッセージ記録などから)、実は一度も医師の診察を受けていなかった。PAにはその他医療職が受けるような規制がないので、このPEを見逃したPAは今もどこか別のGPでPAをしているそうだ。PAは処方できないはずだが、このような結果になってしまったのは、「医師の監督」がうまく機能していない証拠である。

また別の例では、妊娠中の女性が胸のしこりでGP受診した際にPAは「乳腺炎」の診断で「出産後に来院するように」というような助言をし、結局乳がんが見つかった時には全身転移しており女性は乳児を残して亡くなった。GPでは胸のしこりは2WW referral として2週間以内にエコー検査と専門医診察を組まなければならないのだが、PAはそれを知らなかったようだ。

背部痛とPSA検査希望で来院した人にPSA検査をしたはいいものの、上昇しているPSAの意味がわからなかったのか結果説明の予定を組まず、再度患者さんが背部痛で受診した際にも特に説明をせず、専門医へのレファラルも組まず、結局診断がついたのは患者さんがMSCCで救急受診したときだった、というような例もあった。

上記3例はかなり教科書的なケースなので医師が診ていたら予後が変わっていたと思われる。そのため、PAが何をして良い・してはいけないかの規制が整備されるまではGP surgeryでのPA雇用は禁止すべきとの提言をしている団体もあるが今もPAは普通にGP surgeryや病院で働いている。

腫瘍内科で働いていると、GPは高リスクな仕事だとつくづく思う。背部痛でGP受診する患者さんの95%は本当に大したことない筋骨格系の痛みなのだろうが、私が診るのはいつも5%の残念だった人なので、GPの仕事の難しさを痛感する。患者さんは時にGPを責めるが私は責められない。レッドフラッグは常に明らかなわけではなく、たとえばがんの既往はなく脊椎に骨転移してからsciatica様の症状からprimaryのがんが見つかる人もいる。「週3でジムに通い重いバーベルを持ち上げるのが趣味の元来健康な20歳男性、主訴はバーベルを落としてからの頚部痛」みたいなプレゼンテーションで、当初GPでMSK painと誤診されたと憤る患者さん家族もいたが、この主訴で限られた検査で頸椎のsarcomaを疑える医師がどれだけいるだろうか。

医学部の基礎勉強の上に長い専門トレーニングを積んだGPですら間違うことがあるほどPrimary Careは危険な分野なので、GPの仕事はPAが置き換えられるようなものとは思えないのだが、なぜかPAは自らの診療能力にやたらと自信満々だ。

自らを医師と詐称するPA

PAたちは、「なぜ医師よりPAが良いのか?」をテーマに、「医師よりQOLが高い」「(若手)医師より高級取り」「面倒なローテーションをこなさなくても初めから一つの科で集中してトレーニングを受けられる」といった謳い文句で学生を勧誘している。これはコンサルタントになるために好きでもないローテや夜勤や週末オンコールをservice provisionのためだけにこなしている医師たちからすると非常に侮辱的だ。(PAは勉強期間もトレーニング期間も医師より少ないのに1年目のPAはすでに順調に進んだ5年目の医師と同等の給与を支給される上に、夜勤もon-callもなく業務は9時から17時までだ。医師はトレーニング期間中複数の病院を転々としなくてはならないのに、PAは一つの病院でずっと仕事ができる。ロンドンではロンドン手当が出るのだが、それもPAのロンドン手当は医師のそれより随分と高いらしい。このへんの待遇の違いは若手医師が怒っている理由の大きな一部だ。大変な思いをして医師になりキャリアを積んでいるのに、自分より圧倒的に知識も経験も少ないPAが医師の真似事をしているのは本当に腹立たしい、と若手医師の誰もが思っている。)

医師の真似事というのは比喩ではなく適切な表現で、たとえばこの投稿をみて欲しい:

橈骨動脈を触れる「お医者さんごっこ」をしている写真を嬉々としてSNSに載せてしまうのがPAだ。PAは知識よりもパフォーマンスに重きをおいているようで、こんな調子なのに医師と同等の知識・能力があると言い張るとはなんとも烏滸がましい。(ちなみにこれに“Confirmed positive for palmaris longus”ー“Ah crap, turns out the patient needed an ACL repair and they were checking if they were in the 15% of the population with no palmaris longus, meaning they can’t take a graft. They’re always 4 steps ahead of us! They really are so smart”という冗談がついていた)。

PAは「医師が5年かけて学ぶ医学を、私は2年で修了した、ハードだった」と本気で思っている場合が多い(とSNSで見かけるPAを見ていて感じる)。PAは医師と同等のcompetencyがあると主張することに余念がないが、この過剰な自信は無知からきているのだろうか?

こういうのもあった:

インスタグラムに、「若い患者さんのDNACPRフォームにサインした。なんて感じていいかわからない。」と書いたり、直腸診のために患者さんを夜中に起こすべきか投票を募ったり、PAはノリが医学部2年生だ(日本のポリクリに当たる病院実習はイギリスでは医学部2年生から始まる)、とこの医師はツイートで指摘している。

それなのに、つい最近までPAが医師を騙る・患者さんに紛らわしい自己紹介をすることが日常茶飯事だった。首に聴診器をかけて”Consultant PA””Generalist Practitioners“”One of the ward team”など患者さんが医師と間違えるような自己紹介をする、医師ではないのに医師と名乗る(患者さんにだけではなく、LinkedInなどのオンラインのプロフィールでも)、などの行為に少なくない目撃証言があり、ツイッターで大炎上したので、最近「PAは『私は医師ではない』と患者さんにはっきり伝えよ」というようなガイドラインがPAを統括する団体から出た。

日本と同じように英国でも医師でない人が医師を騙る・またはそのようなふりをするのは医師法違反なのだが、私も実際に勤務先でPAがSHOを名乗るのをみたことがあるし、今も結構医師のふりをしているPAはいるんじゃないかと思う。医師を見下すような発言をしながら(これも実際に何件も目撃されている)そのじつ医師のふりをするという感覚がちょっとよくわからない。ちなみにタイトルのNoctorは Not a doctor の略である。

Physician Associatesという名前それ自体が紛らわしいので、かつての名称であるPhysician Assistantsに戻すべきという話も出ている。医師は大賛成している。

不法に処方を行うが罰されないPA

PAは処方や検査オーダーができないので、病棟や救急科で働く研修医はPAのために処方や検査をオーダーさせられることになる(そしてその処方・オーダー責任は全て研修医が請け負う)。AAは初めから終わりまで一人で麻酔をすることもあるようだ(医師は複数のオペ室を監督する)。PAがオペのアシスタントどころか一人で扁桃摘出中をしていた病院の話も明るみにでて問題になっている(外科医の中でもサービスプロビジョンにしか関心のないコンサルタントがPAに賛成しているが、若手医師は軒並み反対している)。

私が前に勤めていた病院だと、処方には紙カルテが使われていたので、PAが処方希望の薬をカルテに書いて「署名だけくれる?」という形でお願いしてきたり、簡単な病歴と共に「この画像をオーダーしてくれる?」という形でお願いしてきたりしていた。A&Eで患者さんの急変対応をしていたために病棟での処方が遅れた医師に、患者さんのID・処方してほしい薬品名を説教じみたメッセージ(「病棟の薬剤処方は基本だろ」)とともにWhatsappで送ってきたPAがいたと激怒している外科医をツイッターで見たことがあるので、電子カルテだとそういう形で医師に処方依頼するらしい。

最近話題になっているのは、PAが医療麻薬を処方した例である。この病院では4人のPAが医療麻薬を処方し、そのうち1人はPAの試験(誰もが受かる)にすら合格していないPAだったそうだ。不法に医療麻薬を処方することと、ドラッグディーラーとは、何が違うのだろうか?ドラッグディーラーは捕まるのだから、不法に(不法と知りながら)処方したPAだって法の裁きを受けるべきと思うのだが、なぜか「コンピューターの不具合」のせいにされてPAは罰を逃れているようだ。紙カルテにおける処方だと医学生でも看護学生でもやろうと思えばできてしまうのだが、そういう事例がないのは、彼らは処方をしてはいけないことを知っていてかつそれを守ろうとするある種のプロフェッショナリズムがあるからだろう。医療安全に厳しいイギリスにおいて、PAは「あり得ない」存在なのだが、あり得ていてしかも国が積極的に推進しているというのだから、二の句が継げない。

医師の手技や教育機会や就労機会を奪うPA

外科系だと、PAは処方ができないので、処方ができる外科専門医になりたい後期研修医が病棟に残らされて処方など担当しその間にPAがオペ室でオペの手伝いをするということで、PAが外科後期研修医のアシスタントというよりむしろ手術の機会を奪っているとして大変評判が悪い。

内科系でも、医師はオンコールや夜勤でへとへとになるまでこき使われるのに、PAはたくさんの外部トレーニングコースに参加できて自己研鑽の時間があるということに不満の声は大きい。

PAが伝統的にSHOの仕事だったことを奪っているので、全体的にnon-training SHOのポジションが年々減っているとされ、それもまた若手医師の怒りを買っている。(怒りの矛先が「SHOのポジション/トレーニングポジションをさらに奪っている」IMGsに向く人もおり、懸念している)

False Equivalencyに基づいて能力以上のポジションに就くPA

PAがSpRやコンサルタントのロータ(シフト表)にいるのも医師の間では大きな問題となっている。

内科系だと、北部の三次病院で小児の肝障害について入院受けいれ・電話でアドバイスをするレジストラの立場の仕事にPAが就いていたことが最近では大きなスキャンダルとなった。アシスタントのはずのPAに医師たちはいつの間にか監督される立場になっていたのだ。

ちなみに私の前勤務先のA&EではPAがコンサルタントのポジションで働いていたことがあったのを覚えている。

規制に向けて

政府は規制に向けて動き出しているが、政府のリクエストによりPAがGMC(医籍管理する団体)によって管理されることにも医師たちは非常に不満を抱えている。医師とPAの境界の曖昧さが持続するのではという懸念からだ。

GMCは100%医師から搾り取る年会費で成り立っている団体で、政府とは独立の存在のはずなのだが、今回の経過を見ているとどうもそうではなさそうだ。

イギリスはそもそも医療安全に大変厳しい国である。GMCが生まれた経緯も患者安全にあるのだが、そのイギリスがPAを医療者とみなすとは狂気の沙汰としか思えない。それを指摘するとBe Kindと言われて声がかき消される。

このポストは大きな波紋を呼んだ。GMCがPAを規制する第一歩として、Doctorsの文字を消去して、Medical professionalsと記載し、そこにPA/AAを含むことを宣言したからだ。

これまで見てきたように、そもそも医師はPA/AAをmedical professionalとみなしていない上に、英国においてはmedical professionalといえば医師を指す。それにも関わらずGMCは、PA/AAをmedical professionalsとして医師と同じ括りに入れてしまったのだ。医師へのなんたる侮辱だろう。

今やGMCはアンチ医師の団体と医師たちからみなされている。GMC設立の理念である患者安全を蔑ろにしてPAを規制に含むという決定から透けて見えるのは、政府の意向を医師や患者安全より優先する姿勢と、本来は独立して存在しているはずの政府への服従だ。GMCの尋問に遭った医師たちの自殺率の高さを見ても、医師から巻き上げたお金でプライベートの医療保険をスタッフに提供している点でも、GMCはアンチ医師団体と言って差し支えないし、この頃はGMCのいい話は一つも聞かない。反ワクチンの医師を擁護したみたいな事件もあったと思う(きちんと話をフォローしていないので気になる人は調べてほしい、確か反ワクチン医師の裁判費用を負担したとか、反ワクチン医師への捜査依頼を無視したとかだったと思う)。GMCに年会費を支払わないと英国で医療行為ができないので、我々医師には選択肢がないのだが、それでも支払い拒否の余波を恐れず抗議の一環として次のGMC会費は払わないつもりだと言っている医師もちらほらいる。

若手医師の嘆き

医学部の定員増の話が出ているが、問題は医師の数ではなくて、トレーニングポストの数だ。

若手医師は夜勤・オンコールの労働力として重要なので、NHSは若手医師の数を温存するために敢えてトレーニングポストの数を少なくして、能力のある医師がキャリアアップの階段を登れないようにしている、という話を聞いたことがある。まだNHSで働き始めて1年半だが、政府のようすやNHSのあり方を見ていると、さもありなんという感じだ。私のようなIMGsも含めると医師はかなり存在している。問題なのはトレーニングポストの少なさで、トレーニングポストがないためにコンサルタントになれないレジストラやレジストラになれないSHO、GPコースに入れないSHOなどがたくさんいる。

そんなにPAの待遇が魅力的なら医師は辞めてPAとして働けばいいじゃないか、と思われるかもしれないが、実は医師はoverqualifiedでPAにはなれない。医学部に入学したことのある人は(たとえ卒業していなくても)PAのコースには進めない。PAは医師以外の医療職経験者は諸手を広げて歓迎するが、医師はお断りなのだ。

なので、2年のコースを経て勤務開始1年の超若手であっても、PAであればGP surgeryでバイトができるのに、5-6年のコースを経て初期研修2年を終えた状態のSHOではその圧倒的経験と知識の差にも関わらずGP surgeryではバイトができない。(病院でのバイトならSHOもPAもできるのだが、PAの方が時給が高い。)

麻酔科医になりたい若手医師はポジション獲得に非常に苦労しているのに、一方でたった2年の修士課程を経たPAは卒業してすぐから麻酔科のポジションで麻酔科に専念した働き方ができる。あまりの理不尽に言葉を失ってしまう。こんな不条理がまかり通っているのが本当に信じられないので誰か理解できるように説明してほしい。

イギリス政府の的外れっぷりは日本といい勝負で本当に呆れてしまう。

まとめ

これから英国で臨床医として働くつもりなら、PAの動向は注意深く追うのがいいと思う。

それからあなたがこれから英国で患者さんとしてGP surgeryやNHSの病院を受診することがあれば、ぜひドクターの診察を希望してほしい。「ドクターに診てほしい」と言う発言は、若手医師には大変励みとなる言葉で、きっとその若手医師は嬉しくてずっとあなたのことを覚えていると思う。何よりあなた自身のためである。

何かPAの状況にアップデートがあればまた追加しようと思う。

18ヶ月目の日記

NHS勤務18ヶ月目ともなるとさまざまなことに慣れ、NHSのあれこれにあまり新鮮味を感じなくなってきた。なので「ブログのネタ」も、NHSらしい何かを見つけるのが段々と難しくなってきているように感じる。過去の記事を見返すと、自分は1-2年前はこんなふうに感じていたのか、と驚くが、今やNHSが私にとっての標準で、日本のことはほとんど思い出せない。

腫瘍内科と緩和ケア科

業務は外来から病棟に移った。全部で25床くらいの病棟を血液内科と腫瘍内科で共有している。血液疾患は血液内科でしか治療できない症状・疾患が多いため、患者さんが多い時にはどうしても病棟は血液内科の人を優先して受け入れることとなり、私が病棟勤務を開始してからは腫瘍内科の患者さんは常に1人ー4人程度の日が続いている(血液内科のせいで腫瘍内科のベッドがない、と小言を言った腫瘍内科のコンサルタントが、血液内科のコンサルタントから「CNS Lymphomaが4件!信じられるか!?昔はこんなことなかったのに。あー忙しい、入院患者が減って腫瘍内科にベッド譲れたら良いのに」と逆にちょっと小言?を言われていてピリピリした雰囲気に緊張した)。病棟から溢れた患者さんは病院中のさまざまな病棟に散らばっており、腫瘍内科の別部署(Acute Oncology Service; AOSー以前の記事に書いた)の医師が往診に行く。あくまで私は腫瘍内科のこの病棟内の患者さんのみの担当だ。

病床数が限られる中、優先的に病棟にやってくる人は、緊急ケモが必要な人(肺小細胞癌の人や、癌再発に関係する症状で入院・外来ケモ室の予約がいっぱいで次回外来まで待てない人など)のほか、主には積極的治療からBest Supportive Care(BSC)に移行しつつある人で、緩和ケア医になりたい私としては日々大変やりがいのある病棟となっている。こういう人は緩和ケア科の医師や看護師が定期的に様子をみにくるので、その会話に同席させてもらったり、アセスメントの理由を教えてもらったりしていて非常に勉強になる。

腫瘍内科に入院しているBSCの患者さんは、ホスピスに勤務していた時とはまた少し雰囲気が違っている。ホスピスにいた頃は、ホスピスにやってくる大体の患者さんや家族は諦めがついているというか状況を受け入れつつあるような感じだった。病棟だと、つい先日まで積極的治療をしていたのにがんの転移・再発の速度が早すぎて、診断から4ヶ月で余命数日〜数週間を告げられる人など、展開が早すぎて患者さん本人も家族も受け入れが追いついていないような感じの人が時々いる。患者さんが若い(+ー子どもがいる)となおさらこの傾向があるように思う。

退院調整も、余命幾ばくかでホスピスに来る人だと、ホスピスで最期を迎えることを目的としてやってくる場合がほとんどなのだが、病棟で余命数日から数週間の状況だと、自宅退院・ホスピス退院・病棟で最期までの3つの選択肢があり、本人と家族の希望に加えて、日々変化する本人の病状に合わせて最適解が刻一刻と変化する。Continuing Healthcare Fast-Track(CHCFT)を通じてPackage of Care (POC);訪問介護士や訪問看護師をどれだけ迅速に導入できるか・電動ベッドなどの必要な器具をどれだけ迅速に設置できるかも鍵となる。例えば本人も家族もどうしても自宅退院を希望していて介護看護にさほど専門知識が必要ない場合には、器具だけを導入してPOCを待たずに家族だけで介助することもありうるが、家族がすごく不安の強い人や介助に専門知識が要求されるような人なんかだと、医療者がちょっと強めに病院やホスピスを勧めるのが本人・家族にとって一番良いことだったりする。本人や家族の性格や希望に加えて社会的状況(例えばすごく田舎に住んでいる人だとそれだけでPOC導入がちょっと大変)も総合的に勘案していい塩梅を決める緩和ケアの医師・看護師は本当にすごいなあと思う。

緩和ケアナースの話し方を聞いていると、優しいのに実用的で支持的で、相槌のタイミングや内容が素晴らしすぎて、心から尊敬する。自分の家族が終末期になったらこういうナースに支えてほしいなあと思う。最近だと、自宅退院したいと希望していた患者さんがPOC・器具導入を待てずに病状悪化したケースがあった。患者さんは意思疎通困難で、パートナーは患者さんが意思疎通できていた頃の希望(自宅退院)に固執して、それを実現できない自分を責めてしまうというような状況で、緩和ケアナースが「もうお話しできない状況になってるけど、XXにとって大切なのは家族といること。意思疎通はできないけれど家族がそばにいることはわかっているはずだし、家族がいるなら家でも病院でもどちらでもいいってきっと言うと思いますよ」と言うような表現をしていて良いなあと思った。自宅看護のための器具が届く日に患者さんの病状が悪化して危篤状況となったので器具を受け取っている場合ではなく早く病院にきて患者さんと過ごすべきだということについて、話の内容は今起こっていることをそのまま表現しているにすぎないのに、複雑すぎず率直で、でも直接的すぎず支持的で、私も早くあんな話し方ができるようになりたいなあと思った。

緩和ケアのコンサルタントは、面会のあとに患者さんのキャラクターを一言でぼそっと表現することがあって、とある患者さんに「なんかalpha-maleって感じなのに、それとは真逆の全然頼りない弱気な一面も共存させていて不思議な人だ」みたいな表現をしたのが言い得て妙だなと思って印象に残っている。先生が私のことをなんと表現するのか少し興味がある。この先生は10分くらいの会話でも患者さんの信頼を得る先生で、毎日会っている私なんかより入院中に1-2度会うだけの先生の方が頼りにされている印象で、私もいつかああなりたいなあと思う。

ある日学生さん2人が、「症例レポートを作るため過去に入院していたXXさんの経過を知りたい」「病棟に症例レポートに最適な患者さんはいないか」と質問してきたとき、患者さんたちのがんに関するこれまでの治療・これからのメインの治療や既往歴や退院時に使っていた主な鎮痛薬はもちろん、趣味や日々の楽しみ、家族、キャラクターや雰囲気まで全部話せることに自分でも驚いた。もしかしたら全員覚えているかもしれないと思って、あとで病棟で2ヶ月間のうちに関わった患者さんを一言でまとめて過去のPatient Listと照らし合わせてみたら、やはり全員覚えていた(まあ日々1ー4人くらいしか担当していなかったら当然と言えば当然かもしれないが…)。ひとりひとりとの関わりが濃い上にホスピス勤務時よりも自分の裁量が大きいため、仕事がかつてなく楽しい。

自分がメインで病棟管理しているため、ナースやOT/PTや退院調整のスタッフとも仲良くなれて、知っている人の多い中で働くのは居心地も良い。日本にいたときはなんとなく志望科を決めきれず、同期がもう専門医を取得している頃なのに私はというと(国を変えたこともあって)いまだに専門科を選ぶスタート地点に立っているのだが、やっとずっと関わっていたい科を見つけられてよかった。同期よりも随分と余計に時間がかかったけれど。

自分にもこれができる日が来るだろうか、と不安になる時、緩和ケアのコンサルタントになるまで少なくともあと最低7年はかかる(私の能力だと10年くらいかかるかも)という事実が少し励みになる。去年の今頃だと、長いトレーニング期間をネックに感じていたことがブログ記事から読み取れるのだが、今はトレーニングが長いことが「それなら自分にもできるかもしれない、これから頑張ろう」と逆に希望を生んでいる。

言語

日本語が不自由になってきた。IMTの面接の準備をしていて、どちらの言語で考えたらいいのかわからない。局所的に「計画の定期的な見直し」「被疑薬」など日本語が出てくる一方で、フォーマルな文章全てを日本語で構築するだけの日本語力がもう失くなってしまったように感じる。年末年始に日本人の友達と過ごした時は、ずっと日本語で話していたのに、Whatsappで英語のチャットをした直後には、目の前の(さっきまで日本語で話していた)友達には英語で話しかけていた。自分が普段どちらの言語で考えているのかそんなに意識していないが、どうも考えていることや話したい内容に応じて頭が勝手に切り替わっているようだ。日本語が不自由になったぶん英語力が少し向上しているとは思うのだが、不自由になる前の日本語ほど英語が流暢なわけではないので、先行きに不安を感じる。

医学英語は英国人にも難しいのだという話をいつか書いたと思う。秘書さんはdiarrhoeaやanaemiaの綴りを聞いてきたしこの仕事に就くまではその単語を知らなかったなんて言っていた(「じゃあdiarrhoeaを一般の人はなんと表現するのか?」という私の質問に、横で聞いていた英国人ナースが「Shit…!」といって大爆笑が起こった)が、最近面白かったのは、SNT (Soft, Non-Tender)という下腿についての典型的なカルテ表現についの仲良しOTのコメント「Soft’n’Tenderかと思った」。それ以来SNTと書くときに微妙にマスクの下で笑ってしまってよくない。

退院可という表現はいくつかあって、基本形はMFFD (Medically Fit For Discharge)だが、私は好んでMOFD(Medically Optimised For Discharge)を使っている。Fitじゃない人も薬剤調整や社会調整が済んだら退院可なので、そういう意味でFitの代わりにOptimisedを使っている。これをみたレジが意味を聞いてきて、「へえーそういう表現もあるのね。MFFDの他にはMRFD(Medically Ready For Discharge)しか知らなかった。」と驚いていた。前勤務先ではMOFDがよく使われていたので地域差もあるのかもしれない。

最近の移民政策・ストライキの動向(17ヶ月目)

移民に厳しくなる英国

不法移民をルワンダに送るという国際法違反の驚きの政策を発表してから数ヶ月、ついに政府は合法移民の縮小にも乗り出した。

今月初めに、来年施行される移民法の概要が明らかになった。主な変更は以下の通り:

  • Skilled Worker Visa (Tier2) 申請の最低賃金基準が£38700に上昇
  • 外国人配偶者を英国へ連れてくるには英国在住側のパートナーが単独で£38700の収入を証明しなくてはならない
  • 人手不足の分野リストを撤回
  • ケアワーカーは家族を帯同することができない
  • 学生ビザを一部の大学を優先的に発行
  • 学生の家族帯同に関する制限
  • 医師と看護師は上記ルール変更から除外(家族も帯同できるし給与が基準以下でもビザ申請可)

この£38700というのはイギリス全体の平均年収よりも高く、人口の73%がこの収入に到達しないようだ。ロンドン近郊以外の地域(特に北部イングランド)と若者が特にこの法改正の影響を受けることが指摘されている。新たなルールが施行されると、これから来たい人はもちろんのこと、既に英国在住で家族で生活しているような人でも永住権がなければ次のビザ更新時に国外退去を迫られることになる。ある程度収入がなければ外国人を好きになることもできない時代が到来する。

また個人的に気になっているのは、日英同性カップルが今後置かれうる状況だ。同性カップルの場合は、日本が同性婚を認めておらず配偶者ビザを英国側のパートナーに発給しない関係で、これまで英国に住むしか選択肢がなかったと思うが、今回の法改正でこの選択肢すらも奪われてしまう。

ポスドクの給与も£38700に届かないが、今後UKRIや各大学は移民法改正に合わせてポスドクへの給与を増やすのだろうか?

医師の職種に限っていうと、この変更で個々人が不利益を被ることは特にない。FY1,FY2(医師2年目まで)はこの給与に届かないものの、3年目以降のポジションで渡英する場合にはこの給与より高いし、そもそも医師は給与に関係なくビザが発給されるし従来通り家族も帯同できる。しかしながらこの移民への対応を見ていると、明日は我が身と身につまされる思いで、自らの立場の不安定さを再認識した。

そもそもBrexitを国民が支持した理由の一つに移民の増加が挙げられていたのに、現状英国への移民は過去最高を記録しており(また帯同する配偶者が家庭外で労働していないにも関わらず公共の福利厚生は利用する)そのせいで公共サービスが逼迫している・Housing crisisが起きている、というのが今回の法改正を促進しているようだ。労働党ですら移民が多いと言っているので、まあ本当に国が回らないくらい多いのだとは思うが、NHSの状況も悪化の一途をたどり、移民はかつてない水準まで増え、Brexitの口実としていた事柄をひとつも実現できていないToryの体たらくには呆れてしまう。まったく何のためのBrexitだったんだ。今すぐにでもEUに再加盟してほしい(とはいえフランスも最近イギリスに負けない反移民政策を発表したしオランダもイタリアも極右政府なので今後世界はどんどん内向きになっていきEUみたいな概念は廃れていくのかもしれない)。

ダークユーモアだが気に入っている

競争が激化する医師の研修

IMT(内科基礎研修)応募者が去年より43%増加し今年は倍率が4:1、つまり1つのポストに4人が応募する状況となっている。例年はどれだけ応募書類のポイントが低くても面接で挽回可能だったそうなのだが、今年はポイントが低すぎる人は足切りに合ってしまい、大きな不満の声が上がっている。英国医学部卒の医師たちの中には、自国でトレーニングに就けないのはおかしい、自国民を優先しないのは世界で英国だけだ、IMGsを規制すべきだ、との声もあり、そのうちIMGsも平等に選考する英国の制度が変わってしまうかもしれない。

医師不足が言われて久しいが、IMGsも含めると英国にはたくさんのmiddle-gradeの医師(将来のコンサルタント・GP)がいるので、実際の問題は医師の数ではなくトレーニングポスト数のようだ。十分なトレーニングポストさえ用意すれば毎年より多くの専門医を輩出できるのにもかかわらず、現在国は予算をPhysicians Associates 育成に割いており近々医師のトレーニングポストが増えそうな様子はない。

トレーニングポストから漏れた医師は外国へ行く選択肢のほか、現在私が就いているようなnon-training jobをしたり定職につかずバイト(locum)で生活したりするのだが、今後そういう人たちが増える中で後述のPAがポストを奪ってゆくので行き場のない医師も増えるかもしれない。

Physicians Associates(PA)/ Anaesthesia Associates (AA)

度々ブログに出てくるPAだがこの頃は医師たちとのオンラインでの対立が激化している。PAは元々はPhysician’s Assistantsと呼ばれていた業種で、理系学部を出た後に2年のPA修士を卒業すると資格が得られる(無資格でPAとして働くこともできるようだが基本的には修士課程を卒業しなければならない)。理系学部はなんでもいいので、たとえば植物の研究をする学部にいたような人だと医療系の勉強は2年だけということになる。AAはそれの麻酔科に特化した業種の人だちだと思ってほしい。

国の政策で現在PAやAAが大幅に増えている。ACP(Advanced Care Practitioner – 看護師出身で更なる教育を受けた人たち)/PA/AAで仕事を回す方がコストが安いので今後NHSは主にACP/PA/AAで回されて、医師の診察を受けたい人はプライベートの病院に行かなくてはならないようになるかもしれないと言われている。

ただし問題点は山積みだ。

まず一番の懸念は安全性だろう。5年間医学を勉強し、2年間の初期研修を終えた医師たちでも間違える。間違いは誰にでもあるが、最低7年間も勉強している医師と、2年しか勉強していないPAが同じSHOのポジションで働くことは果たして適切なのだろうか?

PAは一応、医師の監督下で働くことになっているのだが、それは守られていないことが多い。PAは処方や検査オーダーができないので、病棟や救急科で働く研修医はPAのために処方や検査をオーダーさせられることになる(そしてその処方・オーダー責任は全て研修医が請け負う)。AAは初めから終わりまで一人で麻酔をすることもあるようだ(医師は複数のオペ室を監督する)。

国が特に推進しているのはPAのGP surgeryでの雇用で、現在はなんとPAをGPにする案まで検討されている。医学部を出ていない人を医師にするという前代未聞の政策に医師もACP(医師同様、PAより勉強期間も実践期間も長い)も大激怒しているが、国の政策なのでこのまま実施に至りそうな気がしている。

すでに割と単純な症例での重大な医療事故が複数報告されている。特に有名なのは、若い女性の深部静脈血栓が2度見逃されて死亡に至った例だ。呼吸苦とふくらはぎ痛でGPを受診した女性に、PAは一度目は「Long COVID+アキレス腱痛」という診断をつけ痛み止めで帰宅とした。二度目の受診時には「不安症」という診断でβブロッカーを処方して帰宅とし、その数日後に女性は肺塞栓症で死亡した。呼吸苦+ふくらはぎ痛で肺塞栓症を考慮するのは医学部生でも当たり前の知識だと思うがPAはこれを二度も見逃してしまった。女性は医師の診察を受けたと亡くなるまでずっと思っていたそうだが(メッセージ記録などから)、実は一度も医師の診察を受けていなかった。

PAにはその他医療職が受けるような規制がないので、このPEを見逃したPAは今もどこか別のGPでPAをしているそうだ。

また別の例では、妊娠中の女性が胸のしこりでGP受診した際にPAは「乳腺炎」の診断で「出産後に来院するように」というような助言をし、結局乳がんが見つかった時には全身転移しており女性は乳児を残して亡くなった。GPでは胸のしこりは2WW referral として2週間以内にエコー検査と専門医診察を組まなければならないのだが、PAはそれを知らなかったようだ。

背部痛とPSA検査希望で来院した人にPSA検査をしたはいいものの、上昇しているPSAの意味がわからなかったのか結果説明の予定を組まず、再度患者さんが背部痛で受診した際にも特に説明をせず、専門医へのレファラルも組まず、結局診断がついたのは患者さんがMSCCで救急受診したときだった、というような例もあった。

上記3例は医師が診ていたら予後が変わっていたと思われる。そのため、PAが何をして良い・してはいけないかの規制が整備されるまではGP surgeryでのPA雇用は禁止すべきとの提言をしている団体もあるが今もPAは普通にGP surgeryや病院で働いている。

政府は規制に向けて動き出しているが、政府のリクエストによりPAがGMC(医籍管理する団体)によって管理されることにも医師たちは非常に不満を抱えている。医師とPAの境界の曖昧さが持続するのでは、という懸念からだ。

PAは勉強期間もトレーニング期間も医師より少ないのに1年目のPAはすでに5年目の医師と同等の給与を支給される。医師はトレーニング期間中複数の病院を転々としなくてはならないのに、PAは一つの病院でずっと仕事ができる。このへんの待遇の違いは若手医師が怒っている理由の大きな一部だ。

また外科系だと、PAは処方ができないので、処方ができる外科専門医になりたい後期研修医が病棟に残らされて処方など担当しその間にPAがオペ室でオペの手伝いをするということで、PAが外科後期研修医のアシスタントというよりむしろ手術の機会を奪っているとして大変評判が悪い。PAがオペのアシスタントどころか一人で扁桃摘出中をしていた病院の話も明るみにでて問題になっている。

内科系だと、北部の三次病院で小児科の肝障害について入院受けいれ・電話でアドバイスをするレジストラの立場の仕事にPAが就いていたことが最近では大きなスキャンダルとなった。アシスタントのはずのPAに医師たちはいつの間にか監督される立場になっていたのだ。

ストライキ

政府はついに交渉のテーブルに着いたので10月、11月はストが一旦休止状態だったのだが、政府のオファーがあまりにも馬鹿げているのでJunior Doctor(コンサルタント以下ほぼ全員なので実質Juniorでない医師も含む)は12月と1月に史上最長のストライキを発表した(今日はストライキ1日目で、私は相も変わらず車を修理に出しに行ったー車がいつも故障するのでストのたびに修理に出している)。

Pay Restrationの要求もいまだに通っておらず、英国の研修医事情は先行きが暗い。