Day 6

日記も兼ねて思いついた雑多なことを記録しておきたい。

この1週間、1-2時間は毎日残業していたのだが、今日は17時半には帰宅できた。嬉しい。今日のチームは、FY2が2人(私とトリニダード出身のIMG)、Physicians Associateが1人、FY2 Clinicalなんとかという役職の人(FY2だが特定の科に属するわけではなく日によって必要な科に配属される仕事らしい、パキスタン出身で以前に別のNHSで働いたことがあるらしい人)が1人の4人だった。私の知っているPAは皆バリバリ仕事をする・感じよく仕事を教えてくれる人たちだったので、今日も期待していたのだが、なんと彼女は今日が初出勤でITの不具合により全く働けなかった。私もITには苦い記憶があるし、実際彼女のように初日は全く働けなかったので彼女の気持ちはよくわかるのだが、自分の仕事+彼女が働けない分の仕事に加えて病棟のシステムなどを説明するのは骨の折れる仕事だった。勤務1週間目の外国人の私が他人に指導するなんて信じられない。ちなみにパキスタン出身の医師もIT不具合で数時間働けなかったし、トリニダード出身の医師も1日以上働けない時期があったので、この病院のITには大きな問題がありそうだし、今日はトリニダードの医師は教育のスーパーバイザーとの面談で数時間病棟にいなかったので、本当に大変だった。

トリニダードは英語が母語のようだ。一緒に働いているIMGはダブリンの医学部に行ったのにまだかなり強いアクセントが残っているのは東京で5年過ごした大阪の人みたいな感じだろうか(イギリスやアイルランドの英語がスタンダードという意味ではなく、ある一定のアクセントを持つ人たちに囲まれて過ごしているとアクセントがうつることが多いがそれに全く影響されないという点において)。彼が早口で話したり文脈のわからない状況で話しかけてきたりすると聞き取れなくて困ってしまう。いつも自信満々で元気で、私も彼みたいだったら良かったなと思う。回診中も私はパソコンのバッテリーを気にしてコンサルタントにレントゲンを見せるときだけスクリーンを明るくするとかコンセントを見つけてまめに充電するとか常に次の患者さんのバイタルと採血とレントゲンをすぐ出せるように気を配るとかしているのに、彼はあんまり気にしないしバッテリーが切れたら「切れちゃったよ!これからよろしくね〜」という感じで気軽にお願いしてくるので私が気にしないといけないことが増える。その代わり?私が苦手な25人分の病状のざっとした把握をしてくれているのはとてもありがたい。似たような病状の人が多いのにすごいなあと思う。

横の病棟のちょっとDrama queenっぽい(いい意味で)シリア人のFY1と話すのが結構癒しの時間になっていて彼を見つけると嬉しくなってしまう。

これまで関わった看護師リーダーはものすごく頼りになるのに優しい人たちばかりだったけれど、今日の人は頼りになるけど怖かった。名前+命令形の英語を使う人を実はまだ見たことがなかったのでびっくりした。鼻ピアスに耳にもじゃらじゃらピアスをしたパンクな印象のムスリムの女性だった。ドレスコードとして一応顔のピアスはdiscourageされてるようだが、医師も看護師も、鼻ピアス含めて顔や耳にたくさんピアスがあったりタトゥーをしていたりする人が結構いて、日本とはずいぶん違うなあと思う。

診療に使うアプリが20個以上もあるのも異常に感じるし(すべて一元化されてる日本のカルテは本当にハイテクなんだなと思った)、それだけアプリがあるのに日常の記録は紙カルテなのでGP宛の退院時レターかくには複数のアプリと紙カルテから情報収集せねばならず汚いhandwritingも多くて医療以外の面で疲れる。患者さんの経過を追う上で、手書き文字が汚すぎて読めないものが多くていらいらする中で、時々字の綺麗なひとがいて、天使のように思われる。イギリスというかヨーロッパで一般的なボロいペンも読めなさに寄与してると思うので、日本の筆記具のクオリティがこちらでもデフォルトになればいいのにと思う。働き始めてから日本のいいところをあれこれと思い出すようになった。

仕事が始まってから毎日晩酌している。ジントニックにビールにワインに、なんでも飲む。料理をしながら飲むのを楽しみに帰宅する。まだ完全に引っ越しておらず調理器具がないので小さな手鍋で簡単なものを作る。もう少し健康的な楽しみを見つけたいと思うが、飲まないとやっていられないし、病棟内と通勤で毎日8kmくらい歩いているのでしばらくは飲酒も許容しようと思う。

教育は日本の病院の方が良かったなと思う。教育に力を入れている病院で初期研修をしたからかもしれないけれど、イギリスの中でもちゃんとしている方だと聞く私の病院でも今は雑用係という感じがするし仕事に追われて勉強の時間はない。今日は患者さんの家族に病状説明をする機会があって、役に立てた気がして嬉しくなった(医学知識は日本時代からの持ち越し)。やっぱり事務作業だけでは味気ない。電話・病棟訪問などでその時は突然訪れるし、他に頼める人がいないので自分でやるしかないのだが、電話をとったり仕事を引きうけたりするのは少し覚悟が必要だった(聞き取れなかったらどうしよう?うまく説明できなかったらどうしよう?事前にbriefingして欲しいのに誰も頼れる人がいない)。患者さんも外国人の医師・医療者にかなり慣れているのか、「ふつうに」接してくれるのが変な感じがするが、PLAB2の勉強が役にたっている。

毎週水曜日はランチタイムレクチャーがある。今週はすごい再現動画を見た。外部に発表用に作られた動画でご家族も了承済のものなのだが、Sepsisで17時間以内に亡くなった38歳男性のケースで、主訴は腹痛・発熱(熱は来院時は薬で抑えられてたかも)?GPが夕にA&Eに送るも最初のトリアージは全然問題なく優先度低→数時間後に診察、VBGでpH7.2, lactate 6など異常値だったけど、虫垂炎疑いでコンサルトした先の外科医が「DKA」と言ったので(sepsisからの高血糖もあったらしい) DKAということで治療開始になる→腹痛精査のCT読影で腸管穿孔疑い・フリーエアの指摘あるも読影医がそれを「まとめ」に書いてくれてなかったので誰も読まず見逃される→その間患者さんは廊下で放置される→朝方になって脈拍など分かりやすくバイタルが崩れ始めてICUへ→PEAで開胸心マ?→そして開腹手術に至るも命戻らず昼前に死去。Take Home Messageのひとつが「何かわからなかったら外科でなく内科に」でイギリスはひどいなあと思った。イギリスは全てのCTに読影がついてくるのだが救急外来でもそうだというのに驚いたし、もしかして読影してもらうのに慣れていて外科医や救急医が自分でCTを読むこともないのかなというのにも驚いた。日本の外科の先生はお腹っぽい痛がり方だと病名がわからなくても診療を引き継いでくれる傾向にあると思うので(私が研修をした病院だけかもしれないけど)、オピオイドを使っても止まない腹痛を外科医がとってくれなかったというのも含めて一連の話にすごくショックだったし、自分も廊下に患者さんが寝ている状況で次から次へと診察しないといけなくなることを思うと空恐ろしくなった(次のローテーションは救急科)。

私の研修病院では総合内科と循環器内科と救急科で研修医は必須要員として数えられていたと思うのだが(もちろん医学的判断は上級医が担うが細々した事務作業や日々の回診の面で)、イギリスではどこの科目でも研修医は必須要因のようで、研修医がいなければ仕事が回らず、時に過度の判断を強いられるようだ。とある病院のとある科ではFY1-led round(1年目研修医主導の回診)があって、術後患者さんが便秘からの腸管穿孔で亡くなったりするらしくて、さすがに日本では1年目が主体の治療は聞いたことがないので研修医も患者さんも不幸だなと思った。

自分の名前は気に入っているけれどもっと西洋風の名前だったら人生が楽だったのにと思う。母語によってはrをdrと発音する人たちがいるのでそういう時には、日本語にはlとrに違いがなくて、rはlと発音しますと伝える。もう慣れたけど、hやjを発音するとかしないとか、jと綴るのにyと読むとか、そういうことを初めて伝えられた時のconfusionをきっと私の名前も相手に引き起こしているのだろう。

Author: しら雲

An expert of the apricot grove

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