医師の就職難

イギリスでは(ジュニアポジションの)医師の就職難が起こっている。

原因としては、(1) 私のような外国人医師の急激な増加、(2) 医学部定員の大幅な増加、(3) それにも関わらず増えていないトレーニングポジション、(4) 運営コスト削減のための政府肝入りでの「医師と同じ」ポジションで働くCNS(Specialist Nurse)/ACP (Advanced Clinical Practitioner) やPA (Physician’s associates) の台頭、が主である。

私が就活した2年前にも(1)(3)(4)の議論はあったと思うのだが、目を皿にして情報収集していた私にもさほど目につかなかった。状況が変わったのは本当にここ1年のことだと思う。

“No ICU experience required”と仕事の募集要項にかいてあるにも関わらず、ICU experienceがないからと不採用になった医師(麻酔科トレーニングに乗れなかったので代わりにと仕事を探しているFY2の医師)など、この頃Redditには医師の就職難について嘆く若手医師のポストが溢れている。

(3)については私の今年のIMT recruitmentのポストでも言及した。IMT同様に、GPコースも過去最高に倍率が高くなっており、GP不足にも関わらず、GPコースに応募した人のうち6000人以上がGPのトレーニングを開始できなかった(General Practice ST1 Competition Ratios)。

(2)(3)(4)が(1)で増悪しているので、結果として、就職難への嘆きを見る機会が増え(Terrified of Looming Unemployment1000 applications for ONE trust grade post、What are F2s doing next yearRisk of unemployment for doctorsUnemployment f3Anyone else unemployment in their f3?unemploymentPossibility of being unemployed post F2the fear of impending joblessnessOvercoming the fear of becoming unemployment to pursue the locum life.reflections on my future as current F2)、

またIMGへの風当たりが強くなっている(Overseas doctors applying for HST posts without NHS experiencePoorly trained IMGs and inadequacy of PLABWhen did the government start allowing IMGs to apply for specialty training against UK doctors at equal footing?IMG opinion on the current training bottle neckSome numbers: it isn’t PAs that are driving our current competition/recruitment crisis)。

ただ、私自身IMGなのだが、ヘイトに満ちたコメントは別として、全体的に同調できるコメントが多いのが悲しいところだ。イギリスは英語圏で唯一の、本国出身の医師を他国の医学部卒の医師より優遇しない国である。英語が母語で私より英語ができる医師よりも、英語が非母語でもいくらかの業績のある私が高い面接点を得られるのがイギリスだ。

「イギリスの医学部出身者を優先すべき」「イギリスでの勤務経験のない医師がトレーニングプログラムに応募する際にはポストに見合ったイギリスでの勤務経験を要求すべき(ST1なら2年、ST4なら5年、など)」「イギリスでの勤務歴のないIMGはマナーがなってないし病院のルールがわかってない」などは完全に同意できてしまう。語学力が不十分だと感じる医師も前の病院ではまあまあ見かけた。現在の制度が私にいくらか有利に働いていること自体には感謝の念があるが、イギリスの医学部出身の若手医師には同情するし、私が同じ立場ならひどく憤っているに違いないと思う。

(4)のscope-creepについては、最近のもっぱらの火種はPAで、この頃は厚顔無恥な卒業したてのPAたち(TikTokやインスタグラムにたくさん投稿している)の他にも、コーンウォールで上部消化管内視鏡を指導医なしで施行しているPAが炎上していたところだが、医師の就活難によりACPにも飛び火している。ACPの中には処方資格のある人もいて、救急科などでは本当に若手医師と全く区別のない仕事内容で働いていることがあり、そういう存在が医師のnon-training jobやlocumの機会を奪っているとして批判を浴びている。イギリスの医師は今existential crisisに陥っている(What makes a doctor?, Air ambulance without a doctor on board?)。

今後政府の方針ひとつですぐに情勢が変わる可能性はあるが、これが最近のトレンドなので、イギリスでジュニアのポジションから働き始めようと思っている人は一応知っておいた方がいいと思う(ただredditの医師たちの嘆きを見ていると悲しくなるのである程度までに抑えるのが精神衛生に良い)。

仕事を確保するという観点からは、PLABルートではなくMRCPルートで、レジのポジションで仕事を始めることを検討するのが王道という時代が来るかもしれない(とはいえ現在はレジのポジションで働いているPAもたくさんおり、そのルートもかなり厳しくなってくる可能性はあり、本当に先行き不透明である)。

Learning to Lead

Learning to Lead という院内勉強会に参加した。対象はFY1からコンサルタント直前のSTまで幅広い。結構刺激的な一日になったので、思ったことを記録しておきたい。

Being a compassionate leader in healthcare という最初の講義は当院CEO(元看護師、貧しい農家の家で育ち、「お前には何も残してやれないが、教育だけは好きなだけ受けさせてあげるから、自由にどこへでも行きなさい」と言われて育ったそう)の話から始まった。compassionとは何か、という質問に続き、compassionにひろく括られる概念をさらって、self-careができていないと他人にも優しくできないこと、相手の視点に立って考えることの重要性、などを話していた。NHSではこの、「自分が充足していないと他人にも優しくできない」「ケアの仕事で大切なのはまずは自分のケア」というのが徹底して話されているように思う(前の病院のひどいA&Eでもこの概念自体は大事にされていた。実践できるような環境があるかどうかは別だが…)。

次はThe importance of doctors being good leadersというタイトルの講義で、audit/QIP関係の話が主だった。当院の術後死亡率は他院と比べてかなり良いようで、それがaudit/QIPの成果であること、いいリーダーはoutcomeの改善を目指さなくてはならないことなどを話していた。この話をした外科医は、日本に臨床留学した時の写真を映し出して、「病院がとてもorganiseされていた。日本にいた間に、(特定の疾患の手術について)英国で手術した以上の症例を担当した。これが私のキャリアで起こった一番良かったことの一つ」と話していて、日本で良い思いをしたようで良かったなあと思った。

Kindness and civility in the workplaceという講義も結構面白かった。職場での無礼さの裏には、仕事の重圧、個人的要因、サポート不足、個人的な関係がないこと、ヒエラルキー、文化、などの要因があるようで、特に循環器内科、放射線科、および外科の医師が無礼だと悪名高いそうだ。無礼さとパフォーマンスとの関係についてはいくつか研究があるらしい:

外科医が失礼だと、麻酔科医のパフォーマンスが下がる
新生児科では、無礼な人がチームにいると処置能力も診断能力も下がる

無礼さはinformation sharingとhelp-seekingを妨げる力があるようで、それがperformanceのoutcomeにつながっているらしい。

心理的な安全を担保するためには以下のことが推奨されていた:

  • Clear norms and expectations
  • Encouraging open communication and actively listening
  • Making team members feel supported
  • Showing appreciation and humility when people speak up
  • Make it clear why people’s input matters
  • Admit your own fallibility & normalise vulnerability
  • Explicitly invite input
  • Replace judgement with curiosity

そして無礼さを解消するには以下が推奨らしい:

  1. Check in and heads up
    • I think the conversation could have gone better. Could we talk about it?
  2. Maybe give a let out/soften the blow
    • I appreciate that you are busy, but…
    • I appreciate that was frustrating, but…
  3. Rudeness being in the eye of the beholder
    • … you come across as rude
    • … my colleague was upset / felt humiliated
  4. Highlight mutual gain from behaving differently
    • We all want the best outcome for patients, so…

かなり実践的な提案だなと思った。最初のCompassionの講義で、相手の立場に立ってみて… みたいな話があったのだが、無礼さに関しては相手に譲歩しすぎるとキリがないので、ある時点であらゆる疑念を捨てて(文化の違い?私がそう感じるだけ?忙しいから仕方ないのかも?私の頼み方が悪かったかな?)「無礼なやつだな!」「こんな無礼な態度はどんな理由があっても許されないぞ!」と思いきる勇気(それにactionを起こすかは別)が必要だと最初の勤務先のA&Eローテ以来思っていたのだが(そうしないと精神がもたない)、この講義で無礼さに立ち向かう武器を与えてもらった。

当院は無礼な人がほとんどいない。もしかしたらこういう無礼さがパフォーマンスを下げる話が定期的に院内勉強会などで話されていてみんな無礼さに意識的なのかもしれないなと思った。

GPの話は、いかにGPがflexibleな仕事かという話に焦点があった。GPパートナーになると、例えば1ヶ月働いて、次の2ヶ月を休むというようなこともできるようだ。もちろんパートナーでなくてもGPならパートタイム勤務で週3だけ働く、というような生活もできる。Continuity of Careの話もしていたが、ちょっと個人的にはそれは言い過ぎなんじゃないかと思っている(昨今のGP surgeryやNHSの状況を鑑みて)…。

ガストロコンサルタントの話は対照的に、臨床やアカデミックな話ばかりで私生活の話が一切出なくて、お昼休みに他の参加者たちと「あれはジェンダーと年齢(GPは中年女性、ガストロのコンサルタントは高齢男性)のせいなのか、はたまたガストロが余暇の楽しみを許さない科なのか」という議論で盛り上がった。

現在イギリスでの医師の定年は67歳で、医学部からストレートでコンサルタントになると30年は同じ仕事をすることになるので、キャリア選択で大切なのはfulfillmentである、とガストロコンサルタントは持論を述べ、fulfillmentをもたらす要因として以下を挙げていた:personal, variety, challenge, freedom, progress, colleagues.

ガストロコンサルタントが「varietyが嫌いな人、いる?」と聞いた時に、次の講義をするカリスマ的女性外科医(今は乳腺外科のみ)がピッと手を挙げていて笑ってしまった。

How to get the right balance at work という講義では、当院初だという女性外科医がワークライフバランスについて話していた。いかにもボスという感じ(いい意味で)で堂々とした貫禄ある外科医で彼女の話は大好評だった。ワークライフバランスというものは存在しない!からはじまり、いかにして仕事(家庭の、職場の)に優先順位をつけるかについて話していた。彼女は、庭師、掃除人、洗濯物を洗ってアイロンをする人、私費で秘書などを雇っているらしく、できるだけ仕事は他人に振ること(“Until it hurts”) と言っていた。仕事はいつでもあるが家族はいつでもそこにいるわけではない、というのを肝に銘じて、仕事中毒の彼女は仕事をセーブしているらしい。「お金のことは夫、誕生日プレゼントを選ぶのは自分」という家庭内のdivision of labourがあるのだとも言っていた(ちなみに夫は非医療系らしい。イギリスでは医師以外、そもそも医療系でもない人と結婚している女性医師が結構いる。私の同僚のGP traineeは大工さんとずっと付き合っていて、最近婚約した)。

休暇を楽しむことの重要性も強調していて、「と言っても私は10日以上の休暇は取らないし、その間も最低1回はホテルでメールをチェックする」と言っていたが、休暇がバーンアウトを防ぐ上で非常に重要であることをこの外科医以前にも複数のレクチャラーが話しており、イギリスでは医療職における休暇の重要性がよく認識されているのはいいことだなと思った。どうもパンデミック以降のトレンドらしい。

仕事も私生活もあらゆることをひとつのカレンダーにまとめるのは忙しい人なら誰でもやっていると思う。コンサルタントが彼女のカレンダーの一部を見せてくれたが確かにものすごいイベントの数だった。「メールの返信をする時間」や「何の予定も入れない時間」も必ずカレンダーにその旨記録しておくも言っていた。

私は現在緩和ケア科医志望なのだが、自己不信に加えて他の科目の方がいいんじゃないかという迷いの気持ちもあった(「IMGの私でも、コミュニケーションの果たす役割が大きい緩和ケア科でやっていけるだろうか?IMGの緩和ケア医なんて見たことない。患者さんの最期をダメにしてしまわないだろうか?」「緩和ケアは稼げないから腫瘍内科にしろって言われたことがあるけれど、やっぱり腫瘍内科にした方がいいだろうか?腫瘍内科だと医学の部分が大きいから、多少英語がだめでも患者さんに頼りにしてもらえるだろうし…稼げるし…」)。でもこのガストロコンサルタントの話と外科医の話を聞いて、やっぱり私が興味とやりがいと個人的な意味を強く感じるのは緩和ケア科だし、給料は生きていけるくらいはもらえるのだから、これでいいのだと思えて、よかった。

Inspiring othersという講義では、motivationとinspirationの違いなどについて言及していた。

Breakout sessionでは、ジュニアレベル向けの医師には以下の4つのミニレクチャーが開かれた:1海外で働くこと、2PhD、3SAS、4ティーチングのJDFの仕事について。

海外で働くこと」では、イギリスの医師が海外に行くタイミングが3つあると言っていた。(A)初期研修と中期研修の間、(B)中期研修と後期研修の間、(C)後期研修とコンサルタントの間、である。彼女自身は、(A)のタイミングでマダガスカルに行きDiving Medicineというのをやったのに続いて南アフリカの救急科で働いたらしい。(B)のタイミングではナイジェリアにMSFでボランティアに行ったと言っていたような気がする。南アフリカは書類準備が大変だったけれど、イギリスでは見かけないようなかなり進行したAIDSの人やイギリスでは珍しい感染症なんかの症例をたくさん診られて勉強になったと言っていた。マダガスカルのDiving medicineは、その予定はなかったが南アフリカ行きの書類準備にだいぶ手間取ったためつなぎとして参加したらしい。いくつかおすすめされたウェブサイトを教えてくれて、あとでメーリングリストで送ると言われたので、またメールが届いたら興味のある人向けにここに載せるつもりだが、Expedition Medicineで推奨されているリンクと大体同じだと思う。

イギリスの医師免許で働ける国としては、ニュージランド、オーストラリアがあるが、これらはイギリスの医師の労働環境が悪化する前から1-3年過ごす先として人気だったようだ。シニアレベルで、NZ・AUSで過ごした人が結構いていつも驚く(もちろんイギリスに帰ってこないでそのままNZ・AUSに居着いてしまった「かつての同期」の話もたくさん聞く)。

私は学生の頃は「どこでもいいから海外に行きたい」と思っていて、全ての計画がダメだったら日本で専門医を取った後にMSFで海外勤務をする、と決めていた。今はイギリスでキャリアを確立することが最優先事項なので、海外に行くつもりはないが、もし私がイギリスで医学生だったら、FY2を終えたタイミングでいろんな国を見に行っただろうなあと思って、こちらの学生が少しだけうらやましい。(ちなみに日本国籍の人がイギリスで勤務した後に数ヶ月〜年単位でイギリスを離れる場合にはビザの問題があるので、イギリスに来てからさらに海外へ行きたい場合にはその辺もよく考える必要がある。たとえ素晴らしいチャンスが巡ってきても私は永住権を取れるまでは日本を含めた海外で働くつもりはない。)

イギリスではここ1ー2年で医師の就活状況がガラッと変わってしまって、FY3はもはや自由を謳歌するFY3ではなくて(翌年研修に乗るために)ポートフォリオのためのQIPや研究に追われるFY3になってしまった、と言っている人をredditでみた。残念ながらそれはそうで、多分5年前の若手研修医が人生を楽しんでいたほど現在の研修医は人生を楽しむ余裕はないのだが、それでも、外国に行くこと、休暇や趣味・家族や友人が大切なことを説く人がこういうキャリアセミナーではイギリスでは一般的だし、私の限られた医師生活でも「今年の夏からオーストラリアに行く」というような若手医師と定期的に接触する機会があるし、雇用主や上司もそれを積極的に勧めてくるのは、イギリスのいいところだなと思う。自分は社会の歯車ではなくて、自分の人生を送っていいのだ、それは自己中心的なことではなくとても自然なことなのだなと思える。

使命感を持って身を粉にして働くのは素晴らしいことなのだが、やっぱりそれには向き不向きと限界がある。私が自分の良い意志を最大限に発揮できる環境は、きちんと仕事から離れる時間・考える時間がある環境だと思っているので、その点でそれが当然視されているイギリスに来たのはいい選択だったと思う。

20ヶ月目の日記2 イタリア

NHSで働き始めてからは誕生日に少し遠方への旅行をすることにしている。去年はコーンウォールで、今年はイタリアだった。ミラノ(は飛行機のためでほとんど観光せず)、ボローニャ、フィレンツェ、ヴェネチアを10日間かけて回った。

4月は雨が多くてちょっとどうかな、とイタリア人の友人には言われていたが、私の旅程では晴れが8割、雨が2割ほどで、ヴェネチアではイギリスの夏のような気候で、とても快適に過ごせた。

各都市間は電車で移動した。電車は快適だった。友人に、長距離電車は早めに予約しておいた方が良い、と聞いていたので、電車とAirBnBだけ事前に予約して、あとは直前に決める感じで旅行に行った。なので、ミラノやフィレンツェなど人気の都市では美術館に入るのに予約が必要(予約がないのにどうしても観たいなら、長蛇の列に我慢して加わるか、割高の非正規団体から購入することになる)だと知ったのが直前で、正規より少し高いチケットも何枚か買うことになった。この辺りの情報は日本語で調べると出てくるのだが、イギリスのガイドブックには何も言及がなく、日本のサイトは親切だなあと思った。トイレが綺麗かどうかも言及してあるところもとても日本のサイトらしい。

ミラノ

スリが心配だったのだがイギリスと同じ感じで心配要らなかった。空港から降りてすぐの地下鉄のエスカレーターで、右側に立っていると左側(歩いて登る人用)に私を挟むようにして立ち止まった怪しい二人組がいたが、それ以降は怪しい人も見かけなかったし怖い思いもしなかった。

イギリスのガイドブックに「旅行者はカジュアルな格好をしていることが多いが、地元民は少しおしゃれしているのが普通なので、スリ対策に少しおしゃれをすると良い」みたいなアドバイスがあったのだが、地元民と思われる人もカジュアルな格好の人が多かったように思う。時々、目を見張るほどおしゃれな男性が歩いていた(ピシッとした色物のスーツ、ブランドものに疎い私にも一目で高級品だとわかるおしゃれな靴、同じく高級そうな腕時計、髪型はオールバック、の男性たちが颯爽と歩いている)。おしゃれな女性はイギリスを含めどこの国にもいるけれど、ここまでキメた男性はなかなか見かけないので、ミラノだなあと思った。

飛行機の都合でミラノに着いただけであまり時間がなく観光はしていない。友人からたくさんおすすめのレストランやバーを聞いていたけれど全然行けなかった。最後の晩餐を見たかったのだが、それもチケットを事前に買っておらず見られなかった。

ボローニャ

少し田舎の観光地という感じ。ミラノより時間の流れが穏やかだと感じた。

行って良かったところ:

  1. Santuario Madonna di San Luca
    • 山の上にある教会で、頂上まで続く長い回廊を歩く。
  2. A.C. Vecchietti
    • 高級文房具のお店。眺めるだけで楽しい。店主のおじさんがいい人で、私の拙いイタリア語に付き合ってくれた。
  3. Via Pescherie Vecchie
    • 狭い通りにバーや生鮮食品のお店が所狭しと並んでいる。ボローニャの中心、Piazza Maggioreに接続している通り。
  4. Saràvino
    • タケさんという日本人の店員さんがいた。名札とアクセントから日本人に違いないと思って話しかけたらやっぱりそうで、久しぶりに日本語が話せて楽しかった。ボローニャに駐在でくる人たちもよく利用しているお店らしい。Saràvinoのあるこの通りは、地元の人が飲みに行く通りのようなので、ボローニャにきたらぜひこの辺にも飲みに行ってほしい。(3のVia Pescherie Vecchieは観光客が多いそう。)
  5. Senza Nome
    • 聴覚障害者である店長が聴覚障害者としてイタリアで初めて作ったバーなのだそう。壁に吊られている飲み物のチケットを渡してお金を払うシステムだった。Saràvinoの通りにある。とても気に入ったのでTagliatelleのTシャツまで買ってしまった。飲み物やパスタの種類にまで手話があるとは知らなくて、雰囲気が良かったのはもちろんのこと、そういう知らない世界が少し覗けたという点でたまたま通りかかって良かった。
  6. Ahimè
    • 季節の野菜を使ったイタリア料理のお店。イタリア料理だけれどベジタリアン料理が多い。多分この旅行中に食べたものの中で一番美味しい料理が振る舞われた。

他にもかわいいカフェやpasticcerieにちょこちょこ寄って紅茶を飲んだり甘いものを食べたりしたのだが、名前は覚えていない。

Santuario Madonna di San Luca

イタリアは全体的に(よほど観光地の中心に行かない限り)カフェやバーが安くて、カフェ巡りや Bar crawlが気兼ねなく楽しめた。

この宮崎駿や彼の作品についての本は結構どの本屋さんでも平積みまたはウィンドウに配置されていた。一番左の本は簡単すぎで、中央奥のは難しすぎたが、中央の本は私にちょうど良いくらいの難易度だったので買ってしまった。本屋さんの袋に印字されていた格言が素敵なので見てほしい:Nessuno è mai solo con un libro in mano. (Roberto Robersi). Leggere libri è il gioco più bello che l’umanità abbia inventato. (Wislawa Szymborska).
Senza Nomeのチケット

<<The most important thing in the world is knowing how to be self-sufficient>>

フィレンツェ

どこよりも観光客が多かったように感じた。イギリス英語もよく耳にした。

半日の無料ツアー(チップ要)に参加して、建物にまつわる歴史を聞けた日が一番楽しかった。

ツアーガイドに聞いた本物のジェラートの選び方:
1.ジェラテリアとして存在している(カフェ併設ではない)
2.アイスクリームのガラスが店の外に面していない(本物のジェラートは溶けやすいので、外側に面しているとすぐに溶けてしまう)
3.アイスクリームがもりもりにディスプレイされてない(本物のジェラートは溶けやすいので、もりもりにディスプレイされるとすぐに溶けてしまう)
4.ピスタチオが緑すぎず、やや茶色をしている
5.冷凍庫から出すとすぐ溶ける

カフェではインド訛りの強い英語を話す人が店員さんとのコミュニケーションに苦労していたので通訳してあげて、自分の拙いイタリア語でも通訳できるレベルなのかと少し嬉しかった。インド訛りの英語が懐かしく感じた。

  1. Academica Gallery
  2. Uffizi Gallery
  3. Museo Galileo

ヴェネツィア

今回の旅行で訪れた4都市の中で一番気に入ったのがヴェネツィアだった。去年の誕生日にコーンウォールに行った時に思い出したけれど私は海がすごく好きなので、海辺のかわいい街な上にいかにもイタリアという感じの路地が張り巡らされた風景にどれだけ歩いても飽きなかった。ヴェネツィアでも半日のツアーに参加した。

  1. sullaluna libreria & bistrot
    • 絵本が読めるバー
  2. Vino Vero
    • 占い師みたいな風貌の店員さんに今日の気分を答えると、気分に合わせておすすめのワインを選んでくれるバー
  3. Codex Venezia
    • 日系ブラジル人で、20代の頃にイタリアに来たという画家のおじさんがやっているお店。私は小さなじゃばら折りの似顔絵集を買った。
  4. Osteria Giorgione da MASA
    • ヴェネツィアの食材を使って和食を作っているお店
  5. El Sbarlefo
    • 揚げ物が美味しいバー
  6. Squero di San Trovaso
    • 造船場
  7. Ponte dell’Accademia
    • コンテストで優勝した橋を作り始めるまでの間仮設でたった20日ほどで作られた木の橋だが、あまりに美しいのでそのまま使用されているそう。
  8. Scala Contarini del Bovolo
    • ヴェネツィアを一望できる展望台
  9. Ss Giovanni e Paolo Hospital – Museum of Pathological Anatomy
    • 病院に併設されたヴェネツィアの医学史博物館
  10. Murano, Burano – 本島から船で行ける小さな島

イタリアの長距離列車はどれも快適だった

犬の写真を撮らせてください/犬を撫でてもいいですか、というと大抵の飼い主は笑顔で承諾してくれた上に、犬の名前や年齢や健康状態や誕生日について教えてくれる。犬をきっかけに地元の人たち(や同じく旅行中の人たち)とイタリア語で話すのも今回の旅行の楽しみの一つだった。

猫がいるのが売りの本屋さんなのに猫はいなかった

NO WAY – STRADA CHIUSA が(英語が間違っていて)かわいい

絵本を読みながらお酒が飲めるバー

この絵本は100%読めて嬉しかった

これは80%くらい

これは難しすぎて読めなかった。マルコポーロの話。
語彙の勉強になるので買おうかものすごく迷って別のにした絵本。

とても語彙の勉強になる手の本
これを見て、そういえばパチニ小体ってイタリア人の名前ぽいなと思い調べたらパチニ先生はやはりイタリア人だった。

このへんはものすごく混んでいたのだが、中心を少し外れると全く問題なかった。

ヴェネツィアは車が入れないので、消防船、警察船、貨物船などあらゆる車の船バージョンが存在していて、旅行中は霊柩船も見かけた。

イギリスではオックスフォードとバースに(他にもあるのかもしれない)この橋に着想を得た橋がある

training/non-training jobの違いより病院選びが大事

かつて書いた記事に少し修正を入れたとおり、少なくとも内科系でNHSに勤務する場合には、training jobかnon-training jobかの括りよりも「どこで働くか」がサポートを受ける上で圧倒的に重要だ。今年からFoundation Yearの医師は業績やテストの成績に関わらずUK全土どこに割り当てられるかわからない仕様になったようなので、それも踏まえると、ギャンブル要素の強いtraining job (Standalone FY2など)よりも、ある程度自分の選好を組み入れられるnon-training jobの方がいいのではとすら思う。

どうも口コミを色々見ていると、私がNHS1年目の時に耳にした”FY1-led ward round”(研修医1年目主導の回診)は外科ではそんなに珍しくないのかもしれないようだ… が、これについては日本で初期研修を終えてからやってくる医師に関してはあまり心配いらないだろう。日本の初期研修はイギリス準備に良い制度なので、その間に色々勉強しておくと、あとで未来の自分や一緒に働いている未来の同僚にその知識量を感謝されるかもしれない。

あと外科系は全体的に評判が悪い傾向にあり、内科系と比べていじめや態度の悪い上司の話が目立つ。外科トレーニング中に症例を得るのはイギリスでは多分日本より難しいので、外科系でイギリスに来たい人はその辺も渡英のタイミングと合わせてよく考えた方がいいと思う。(ただし日本と比べると多分外科でもQOLはこちらの方が良いし、プライベートの外科病院もたくさんあるので、イギリスの方が収入も高い。)

私がIMTのポジションのランキングをつける時にhttps://juniordoctors.co.uk/ で見かけた冗談のセンスのある口コミや空恐ろしい口コミを参考に書いておく。

大学院の頃のフラットメイトが初めて働いた病院で病棟スタッフに随分といじめられて(無視、指示を聞いてくれず仕事にならない等)泣いていたことがあり、彼女は私と違ってそうそう弱音を吐かないのにその彼女を泣かせるなんてNHSはなんて恐ろしいところだろう…と思っていたのだが、期待通り(?)彼女の勤めていた病院の評判はものすごく悪かった。口コミが悪すぎるところはまあその通りの労働環境だと思って差しつかえないと思う。

Good senior support by SpRs who are generally miserable but consultants are very unsupportive and extremely toxic/borderline bullying in some subspecialties (Paeds and esp Onc).

→アカデミックな有名病院のレビュー

This was my first FY1 rotation at the hospital that is rightfully nicknamed “Death Valley Hospital. (…) The ward was notoriously known to be a dumping ground of complex patients that wards did not know how to deal with.

Consultants are supportive but rarely present. Some consultants give incredibly outdated medical advice, are inappropriate/rude, do not understand that you’re human and can only work at a certain pace, and are just not safe (they don’t read notes fully or make themselves aware of the patient fully – so it will be up to YOU to let them know of any issues THERE AND THEN).

The hospital has changed significantly in the last year. Inherited debt from local hospitals means that it now is scrimping on employing doctors (Trust Grades etc) for known vacancies.

Absolute dirt. I phone porter to take ammonia level to lab on ice Porter flees hospital with sample and sells on dark web for high salary The dishonourable cabal of rascals running this place refer me to GMC over stolen blood tubes Filty dirt!

THE worst rotation I have ever been on. Work at 120mph every single day to do the bare minimum due to understaffing and finish 6-7pm everyday (1-2 hours late).

If you are a medical student and actually are dumb enough to choose this hospital then you deserve to suffer. This place was rated in the GMC survey as one of the lowest rated hospitals in the country and no surprise.

If you have a choice at all, do not train here. Having just finished foundation, it is true to say the entire hospital is farcical. Yes the people throughout are very nice, but the rubbish systems (…) make — a miserable place to work.

There are 9 online systems for different tasks and results (maybe more?) Which all require different passwords and logins. And are often broken or offline.

→これは私が1年目に勤務した病院と同じ。こういう病院もまあまああるようだが、IMGの我々にとって汚い手書きの英語を読むのは大変にストレスのある仕事(1年くらいかけて段々と読めるようになる・まあ読めるようになると日常生活でも役にたつことがある)だし、日本のカルテに慣れているとイギリスのこういうのは耐え難いほどの苦痛なので、勤務先を探す時には一応電子カルテ事情も調べておくといいかもしれない。

This SHOULD NEVER BE a training hospital. There is no support, no training, no teaching provided.

→こういうところで働くのはやめた方がいい。トレーニングジョブでもノントレーニングジョブでも関係なく大変な思いをする。

As SHO forced to carry reg bleep on nights and weekends. Minimal/ non-existent senior led ward round. Poor staffing levels leaving SHOs to fend for themselves majority of the time.

Very poorly supported, consultants saying they are ‘cardiologists’ and almost refusing to see general medical patients. Had to do ward round alone on my first day, no introduction no orientation to the ward and no morning handover of the patients.

Bullying, Poor leadership & No support. Today an F2 died. Those that know her said that a consultant bullied her. Dead less than 6 weeks after starting F2, emails sent around telling her she should jump off a building, not at work in the 2 weeks before her death.

At — you are just a line on the rota! No one cares if you live or die- as long as gaps in the rota are filled

Avoid!!! The bullying is relentless and openly tolerated. They’ll blame mental health for any suicides instead of the toxic culture they’ve created. Do NOT apply.

I start work at 8am, I arrived on the ward at 7:45 A nurse complained that she was waiting for discharge summaries and TTOs, At 7:55 the reg arrived- he greeted me by saying Oi idiot, I hope the notes are preped, I want to go to theater not waste time on ward rounds At 8:20 the consultant arrived and said-Oh I have to do the ward round with dumb, and dumber-lets get this over before I punch someone.

Cons – very angry Consultants who blame you for things that are not your fault

→これは個人的に経験があって、今思い出してもあまりの理不尽に腹立たしい。

Half your time is wasted trying to find a space to see patients in minors-whereas in majors you have the joy of trying to examine patients in trolleys in the corridor where patients are packed like sardines. Zero privacy for the patient, & a horrible experience for doctors too

void!!! The bullying is relentless and openly tolerated. They’ll blame mental health for any suicides instead of the toxic culture they’ve created. Do NOT apply.

Rated as inadequate by the CQC, bullying highlighted by the CQC. Doctors just starting their career bullied to death Do not train here if you value your GMC registration. Consultants are always threatening to report junior doctors to the GMC, upper management will blindly support the consultants. Investigations into complaints are a kangaroo court, and doctors who raise patient safety concerns will be labelled as vexatious. Teaching does not exist. There are a few good consultants, but they do not stand up to the consultants who are bullies.

We lost a doctor to suicide. She was suspended after a campaign of bullying from the renal consultants, and HR Junior doctors have been sharing details of the horrific bullying emails she received. The hospital is acting like nothing has happened.

これを見てイギリスで働くのをやめようかと思った人もいるかもしれないので、一応評判のいい病院の評判へのリンクも貼っておく:Royal United Hospital Bath, Worthing Hospital, Royal Berkshire Hospital, Homerton University Hospital

↓IMTプログラムの評判

病院ごとのランキング

20ヶ月目の日記1 パレスチナ人男性のハンガーストライキなど

複雑な背景を持つひとたち

私は病院の倫理委員会のスタッフで、この間とても時事的なケースを経験した。個人情報なので胸の内にしまっておこうと思ったのだが、実は結構有名なケースのようで、ツイッターで(病院ではなく患者さんの支援団体に)公表されていた。ネットに出ている情報だけで少しこの男性に触れたい。

この男性は、イスラエルとパレスチナの戦争(イスラエル人によるパレスチナ人の殺戮というべきだろうか)が始まった頃にハンガーストライキを始めた。倫理委員会が握っていた情報にはなかったのだが、記事によると、彼の生き別れた妹がパレスチナにおり今回の戦争で命を落としてしまったのが、ハンガーストライキの契機となっていたようだ。「ハンガーストライキをしている人が『死にたい』『死んでも良い』というとき、その意見はautonomousなのか」「過去・現在の大きなトラウマが意思決定に影響しているとき、その意思決定はautonomousなのか」など、倫理委員会では主にautonomy関連の議論が多かったように思うが、ネットに出ている情報以上に色々と複雑な背景があり倫理委員会での意見はあまりまとまらなかった。あまりまとめないで意見だけ出すのが当院の倫理委員会のスタイルなので、それはそれとして、最終決定は担当医・担当科及び精神科医に任されることとなった。

その後、自主的にハンガーストライキをしている人の経過観察のために冬の逼迫している病院のベッドを使うわけにはいかないという事情もあり、彼は退院した。退院後にどうなったかを私は知っているのだが、どうもネットには追伸記事がないので、ここには書かない。

私は西ヨーロッパを「世界の良心」だと思っていた。きれいごとでもいいから、人権や倫理を建設的に議論し高々と掲げてくれる西ヨーロッパに他のどの地域よりも信頼があったし、それが西ヨーロッパ地域に引っ越したい理由だった。イスラエルとパレスチナの戦争はその信頼を根幹から揺るがしたように感じる。戦争が始まった当初、欧州連合の委員長が「私は徹底的にイスラエルを支持する」みたいな(個人的な)声明を出した時も自分が目にしていることが信じられなかったし、パレスチナ軍による残忍な行為がこれだけ明らかになっている今ですらイスラエル支持を表明している人たちを見ると、世の中には考え方が根本的に違っている人たちがいるのだということをまざまざと思い知らされる。

悲しいことだが日常になってしまったガザからの陰惨なニュースがまだ日常でなかった頃に、この男性の話が倫理委員会に届いて、「ああイギリスに住むと世界がこんなに近いのだな」と思った。

イースターホリデーで何をする?という話を同僚たちとしていた時も、「世界がとても近い」と感じた。ミャンマー出身の同僚は「帰りたくても帰れない」と言っていた。どうも、クーデターで軍事政権になって以来、一旦一時帰国してしまうと出国するのに特別な許可証が必要とかで、それが発行されるのに数ヶ月かかることもあるらしい。いつかは帰国したいけれど今はまだ無理だ、と寂しそうだった。シリア出身の同僚は、「ヨルダンまでは飛行機で、そこからはタクシーに乗る」「シリアはWifiが弱いから電話とかは無理。もし本当に連絡が途絶えたら死んだと思って」と笑うに笑えないジョークを飛ばしていた。IMGの中にはこのように母国に複雑な事情を抱える人が少なからずいる。