採用決定後の手続き

採用決定後は大忙しだ。

Julyビザや契約書
15面接
18採用通知Accommodation問い合わせ
19誓約書などの書類送付
20CoS発行される→Tier 2ビザ申請する
21(Tier2処理中だが勤務可とHome Officeから病院へ通知→ID check予約する)
22ID check (ONLINE; Passport, BRP card, Driving License, DBS)Accommodation再度問い合わせ
23
24
25Accommodation申し込み
26Occupational Health Check
27– Indemnity Cover問い合わせ
– BMJ membership問い合わせ
Accommodation空きなしと通知
28(Shadowing)
29(Shadowing)Accommodationにキャンセルがあったので住めると通知
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31
1(Shadowing)
2(Shadowing)
3Induction
4勤務開始

家がない

大学寮に住んでいた時、友達が「3日後に仕事が始まる!」とバタバタと引っ越していったのを覚えている。私も同じ道を辿ることになったし仕事始めの1週間はなんと片道1時間半かけて現住所から通勤することになった(ホテルやAirBnBも検討したが£70/dayくらいかかるので断念した)。

18日の採用通知の時点でaccommodationについて問い合わせていたのに4日後に再度問い合わせるまで担当者に話が通っておらず、一旦私はWaiting Listに入れられた。仕事開始まで1週間を切っているのに家がないので、急いで不動産業者と連絡を取り始めた。Zoopla, Rightmove, Spareroomといった有名サイトを使った。私の住む地域ではZooplaとRightmoveにはほとんど物件がなかったので、一応全部確認してみるのが良いと思う。

Private accommodationのViewingを済ませたところで病院斡旋のaccommodationにキャンセルが出たので8月5日から入居可と連絡が来て、Privateのと迷ったのだけど結局病院のを選ぶことにした。病院のはKey Workers向けの施設で3人でハウスシェアをする(en-suite)。ちなみに私がみた他のところもen-suiteで、20-50代の人が5-7人でキッチンとダイニングだけ共用というタイプの家で、イギリスでは幅広い年齢の人がシェアハウスに住むのだなと少し驚いた。日本の一人暮らし向け住宅のような1DKの賃貸もありはしたのだが、家賃が高く家具家電なしだったので選ばなかった。私は学生寮に住んでいた時はen-suiteで現在はトイレもシャワーもキッチンも全てシェアという状況なのだが、やっぱりトイレとシャワーだけでも自分だけで使えるとストレスが少ないので、次は絶対en-suiteにしようと思っていた。

仕事が決まってから仕事開始までの時間が短くて家がないと友達に愚痴ってみたところ、”Sadly yes the accommodation situation for junior doctors is diabolical. Even when on mandatory rotations in the training programmes accommodation is rarely provided, however often you can claim expenses, however these are typically insufficient to cover actual costs.” と言われた。これもイギリスで働く上での洗礼なのだろう。

ビザが遅い

追加で£500くらい払ってPriority Serviceを使ったのにビザが1週間経っても届いていない。病院とHome Officeがやり取りして勤務可とは言われている?ようなのだが、ビザが届いていない段階でも働けるのならビザ取得の前に教えて欲しかった。

Indemnity Cover

全医師が自発的に加盟している保険制度で、私はMDUのにした。友達には年間£60と聞いていたのに、なんと驚きの£720を支払った。立場ではなく卒業年数によって決まっているらしく、FY2のような常に指導医のもとで働く立場でも関係なくこの金額らしい。思ったより痛い出費となった。

Shadowing (雑感)

最低1週間はShadowingした方が良いと友達に勧められたので病院に通い始めた。

ある日の病棟では、ナイジェリア出身のコンサルタントに、オマーン出身のSHOにインド/マレーシア出身の研修医とみな非イギリス人だった。ちなみにそれを横で聞いていた看護師はアイルランド出身で、Tory党支持者には「外国人のせいでNHSが潰れる!」と煽動する人もいるが、むしろ外国人によってNHSがなんとか機能しているという方が正しいように思う。

朝9時に夜勤看護師からの送りを聞き終わったらコンピューターの前で患者さん全員の採血など検査結果をコンサルタントと一緒にレビューして、その後回診車(紙カルテが詰まっている)をゴロゴロ押しながら全部屋を回る。コンサルタントが患者さんと話したり診察したりするのを横で聞き、会話や検査所見をカルテに記載するのが研修医の仕事で、医師というより秘書みたいだなと思った。

紙カルテもちょっと大変だ(未だに紙カルテの病院と電子カルテの病院があるらしい)。日本でコピペするようなところ (#1 — #2– #3 — resolved)も毎日手書きしなくてはならない(本当に忙しい日は“noted”と書けば良いらしいが)。 採血結果やエコー所見もパソコンを見ながら紙カルテに書き込む。研修医が読み上げる採血結果を私がカルテに手書きしていたのだが、それはさながらリスニング問題のようだった(“Hb 120… was 110” – wasの後のは前回の採決結果なので本日の結果に括弧付きで付記する)。日本とイギリスでg/dL, mg/dLなど微妙に単位がずれていることが結構あってそれもまだ不慣れなうちは戸惑いがある。また紙カルテなので常に引き出しの中にあるとは限らず、カルテを病棟のどこかから見つけてくる作業もまた研修医の大事な仕事の一つらしい。上司から昔話としてこういう話を聞いたことがあったが、まさか自分が経験することになるとは思わなかった。

18人くらいいる患者さんの検査オーダーや退院レターを1-2人の研修医が担当していて大変そうだった。この時期は休暇をとる人が多く人手不足で私が勤務開始する来週には人がたくさんいるとのことだが、15時まで昼食もとることができず働いている研修医を不憫に思った。明日は我が身である。

幸い医学的な面ではまだ困ったことは起きていないし英語も問題ない。初めてのNHS勤務なのでと朝の送りの前の待ち時間で略語の意味をスタッフに聞いていると、別の看護師さんが略語集を印刷して渡してくれた。新規に学んだ略語は、b/l:bilateral, BNO: Bowels Not Open, a/w: awaiting (associated withもあるけど), TWOC: Try Without Catheter (尿カテ抜去トライ) など。

紙カルテという時代遅れなものを使っているのに、他の面ではやたら電子化が進んでいて、患者さんのバイタルサインはなんとiPhoneのアプリで確認していた。検査結果を見たり退院時サマリーを書いたりするパソコンは病院から一人一人に支給され、自宅に持ち帰っても良いらしい。セキュリティ面で大丈夫なのかと心配になるが、紙リストの方が置き忘れなどセキュリティに問題があるという見方もあるようで、興味深い。ちなみにシフトの調整も全てアプリで行われるし、治療方針やreferralに関する院内プロトコルも全てアプリで見ることができる。これは私のDenearyに限るものではなく、NHS全体に共通しているようだ。

労働環境

上述した通り研修医の労働環境はあまり良くないので、研修医の時点で仕事をやめてしまう人もいる。来年には研修医のストライキが予定されているようで、私も参加することになりそうだ。ストライキには賛同することが多いけれどまさか自分が参加する側になるとは思っても見なかった。

これからイギリスを目指す人の気持ちを挫きたくない一方で、こういう話を隠してブログを書くのは不誠実なように思うので、authenticityを大事に時々医療崩壊の危機(もう崩壊しているという人もいる)にも触れながらブログを書きたいと思っている。私は縁あって・様々な理由でイギリスが好きでイギリスに来たが、万人向けの国ではないし準備は他国同様に大変なので、どういう理由でそれだけの時間的・金銭的投資をするのかは今一度自分に問うてみると良いかもしれない。

NHS in England facing worst staffing crisis in history, MPs warn (BBC)

NHSでの最初の1ヶ月を生き抜く方法

というタイトルのウェビナーに参加した。引越し直後の話(BRPカードや渡英の際に持ってくるものなど)は特にNHSでの仕事に限ったことではないので省略するが、勤務に関連することで紹介されていたものは記録しておきたい。

仕事関係

  • 最低2週間はshadowing periodを設ける、そのようにtrustに依頼する
  • Locum nestなど自信が付いたら医師バンクに登録する
  • Indemnity Cover登録する
  • Occupational health checkを受ける 特にTBが心配な場合
  • Appraisalのためのアカウントを作成する ラインマネージャー・appraiserと会う
  • HORUSでe-portfolioを作成できないかtrustに尋ねる(※Foundation doctors向けの制度だが、病院によっては費用を負担してくれる)/ Supervisorを把握する
  • ISCP, e-logbook, RCOA logbookなど自分の専門に応じたportfolioを作る
  • スタッフと仲良くなる

ワークライフバランス

  • 仕事は業務時間内におらわせる(そのためにshadowing periodの間にできるだけ仕事を覚える)
  • 友達を作ったりリフレッシュしたりするのに役立つ趣味を見つける(水泳クラブ、ハイキングクラブなど)
  • 休暇中の旅行の予定を前もって立てておく(典型的には、1年で27daysのannual leaveに加えて、study leave + study fundsというのもあるので、そういうのも有効活用して早めに色々予定しておく)
  • 運転免許を早めに取っておく(ロンドン以外の場所での勤務だとあると便利)

天気

  • (IMG向けの話では必ず天気の話が出る。個人的には冬季を除いてはそんなに不満を感じていないのだが、多くのIMGがやってくる地域とイギリスの天気の落差は、日本とイギリスの天気のそれより大きいのかもしれない。)

アコモデーション

  • 病院のアコモデーションの多くは単身向け。時に家族用の部屋もあるが、珍しい。安いし職場から近いしよくメンテナンスされていて掃除の人が来てくれたりもするので、同居人がいない場合には病院のアコモデーションがお勧め。

言語と文化

  • 患者さんの話がわからなかったら聞き返すこと
  • 特にhand overとMDT中はわからないことがあれば明確にすること
  • 親切な人が多いので助けを求めれば助けてくれることが多い
  • 知らない人にも挨拶しよう

病気、GP登録

  • 早めにGP登録すること。最近はネットで登録できる。
  • 病院のマネージャーに頼むと視力検査のクーポンがもらえる。