IMTのポジションを得た

前回の続き。幸運なことにIMTのポジションにマッチした。

ロンドンから車か電車で2時間くらいまでと決めて、KSS (Kent, Surrey, Sussex), TV (Thames Valley), EoE (East of England), Severn, Wessex 内の仕事を600件くらい順に並べた。かつて同じくらいのランキングだったというレジには400件くらい並べれば大丈夫と教えてもらったが、無職になること(=また例年通り就活を頑張らなくてはならない)と、不本意ながらトレーニングジョブがあるのとどちらが良いかを天秤にかけて、結局車で3時間の距離にあるBristolやPortsmouthや評判が非常に悪い東の方のKSSの病院も含めて600件ほど並べることにした。

過去2年のnon-training jobの経験を踏まえて、あまりに評判の悪いところや住民が特定の民族・人種に偏っている地域はできるだけランクを落として(現住所のバースはとてもきれいなところだけれど住民が白人英国人ばかりですこし居心地の悪さを感じる)、ロンドンをはじめとするあらゆる人種や民族の人がいる地域やリベラルな人が多そうな地域から順に書いた。もちろん病院に対するオンラインでのレジデントドクター(ジュニアドクターに代わる言葉としてBMAが提唱しはじめた)からの評価も加味したし、レジやコンサルタントからの意見も参考にした。土地勘があったり病院の事情をわかっていたりする人の話は貴重だ。

こんな感じで、まずはエクセルファイル(ここからダウンロードできる)から大まかに都市名を抜きだし、ブロックごとに順位を決めた。その後、エクセルファイルに戻って各ブロック内の仕事を順に並べた。ロンドンは病院がありすぎるのと、私の順位ではマッチする可能性が低いのとで、あまり真剣に考えないでほぼエクセルファイルのままの順位で提出した。各ブロック内では、自分が興味のある科(腫瘍内科、緩和ケア科、呼吸器内科)と、レジになる前にやっておきたい科(循環器内科)のローテがあるポジションを優先的に並べた。

結果、Worthingという地域の病院とマッチした。緩和ケアがあるポジションは地域限定だと非常に少ないので、このポジションのオファーが来てとても嬉しい。病院を転々としなくて良いこと、Brightonから車でも電車でも20分の距離にある街なので憧れのBrightonに住めることもまた嬉しい理由になっている。

(ちなみに類を見ないほど評判の良い現勤務先RUH↓は、この病院だけでのトレーニングポジションというのはなく、少なくとも車で30-40分は離れた複数の病院を転々とするのが必須だ。車がないとなかなか厳しいと思う。選択肢を広げるためにも、イギリスでの研修を考えている人は自動車免許は取っておいた方がいい。)

Accept with Upgradeでオファーを受けた。IMTの面接を受けた人の中には、小児科や産婦人科や放射線科やGPや麻酔科など、全く別のコースを検討している人も多くいるようで、そういう人がマッチングから抜けると、ランキングの高い順にその空席を埋めるように自動的にオファーがアップグレードされる仕組みになっている。

できればロンドンかオックスフォードがいいなあと思っていたが、ブライトンはいい街だし、コレッジへの所属がない今(アラムナイカードでコレッジ内を散歩したりアラムナイイベントに参加することはできるが)オックスフォードに住むのは疎外感があって微妙かなと思ったりもして、これはこれでよかったように思う。当初Worthingとマッチした時には少し微妙な気持ちだったのだが(なんでBrightonじゃないのかと不満だった)、よく調べるとここ数年でBrightonの病院はガラリと様相が変わっていて、レジデントドクターの自死や複数の患者さんの不審死に警察が介入する事件があったとかでレジデントドクターからの評判が随分と悪く、「Brightonの病院はやめておけ、Brightonに住みたいならWorthingの病院がいい」みたいなアドバイスがちらほら目についたので、自分の心身の健康を一番に考えている私としてはこれ以上のポジションはないんじゃないかとも思い始めている(なのでAccept with UpgradeをAcceptに変えてしまおうか悩んでいるところだ)。アップグレードは48ー72時間ごとに起こるとかで、私の同僚のIMT2は「僕は最終的に4回もアップグレードした」と教えてくれた。悩んでいる間にも、上位にランクした別の病院にマッチしかねないので悩んでいる余裕はないのだが、まあ次の3年の仕事・居住地に関わる大切な決断なので踏み切るのはなかなか難しい。

これからこのアップグレードが1ヶ月かけて行われるので、ここからまたアップデートがあったらこの記事に追記したい。

21/3/24 追記:病院の選択についてたくさんのレジやIMTに話を聞いたのだが、よく聞くアドバイスは「住みたいところにすればいい」というもの。IMTはどこに行っても雑用係で大した違いはなく心身に悪影響の仕事なので、家族や友達と近い地域や住みたい街にするのが一番だ、と3人に1人くらいの割合で助言される。

24/3/24 追記:22/3に届いたメール。私は1320位で、私のポジションはKSSにある。

The lowest rank to be made an offer at the moment is 2053. We have looked by region and the lowest ranked candidate currently offered for each region is below; we are sorry but we are unable to provide more granular information within a region:

East Midlands - 1796
East of England - 1836
KSS - 1773
London - 824
North East - 1851
North West - 1829
Northern Ireland - 2053
Scotland - 1759
South West Peninsula - 1880
South West Severn - 1355
Thames Valley - 1198
Wales - 1963
Wessex - 1694
West Midlands - 1734
Yorkshire and the Humber - 1950

8/4/24 追記:最後のアップグレードでブライトンにマッチした。その前にWorthing内の別のポジションにアップグレードしたので、私は合計2回のアップグレードを経験した。ブライトンの病院の評判はネットでは非常に悪いのだが、知り合いの口コミで全然問題ないみたいな話を聞いたのでWorthingより上位にしていたらマッチした。大丈夫かな…という気持ちと、可愛くて多様性のある街に住めて嬉しいという気持ちで複雑な思いだ。

下のメールは4月3日に送られてきたもの。昨今のNHSやResident Doctorsの状況を反映してか、例年と比べてマッチングから抜けた人がずいぶんと少ない。

To reconfirm, the lowest rank to be made an offer at the moment is still 2135. Regionally, the lowest ranked candidate to have been made an offer is below. Please note that each region has areas which are more or less popular and so this is only indicative of the least popular part of that region.

East Midlands - 1903
East of England - 1940
Kent, Surrey and Sussex - 1886
London - 981
North East - 1959
North West - Mersey - 1877
North West - 1941
Northern Ireland - 2135
Scotland - 1883
South West Peninsula - 2015
South West Severn - 1355
Thames Valley - 1260
Wales - 2066
Wessex - 1905
West Midlands - 1945
Yorkshire and the Humber - 2014

寄稿:PLABについて AUさん

合格報告5人目のAUさんがPLAB1と2の詳細な寄稿をくださいました。合格おめでとうございます👏

初めまして、AUです。

PLABについて日本語で情報を得られる機会は限られており、私も合格するまでに相当苦労しました。試験の1ヶ月前にこのブログに出会い、何をやるべきか明確化できたので試験に合格することができました(Xで管理人さんのブログが突然お勧めに表示されたのが全ての始まりでした)。どこかで頑張っていらっしゃる誰かのためにこの情報が役立てば幸いです。

【経歴】

現在医師7年目、日本の地方の大学病院で眼科医をしています。簡単にPLABまでの道のりを記載します。

2019年7月 OET

2019年11月 PLAB1、合格

2020年2月 Common Stations(現地のコース)を受講

2020年3月 PLAB2を受験しようとするも試験数日前にCOVID-19の世界的な流行のため試験が中止に。以後、暫くPLAB2は中止となり、日本政府による渡航規制も続いたため試験を受けられず。

2022年夏 OET再受験(たとえPLAB2に受かっても期間的に受け直しが必要なため)

2022年10月 PLAB2 1回目、PLAB2の受験期限を迎えるため挑戦するものの不合格

2023年8月 PLAB1、合格(PLAB2の期限が切れたためPLAB1受け直し。期限内なら4回まで受験可能。)

2024年2月 PLAB2、合格

【OET/IELTS】

 IELTSはwritingで7.0を取るのが難しいです。OETは大阪でしか行われておらずIELTSよりも受験料が高いですが、月に1回は行われているのと、writingはIELTSよりも簡単なので、もしIELTSに苦労されている方がいればOETも考えてみてください。

【PLAB1】

 日本から比較的近くて時差が少ないオーストラリアのシドニーで受けました。会場はシドニーの中心部にあります。シドニーだと夕方の16時くらいの試験になります。

 私は1回目のときはPLABABLE、2回目のときはMedRevision+Plab keyを使いました。正直PLABABLEでもMedRevisionでも良いと思います(MedRevisionのほうが、まとめがしっかりしている印象あり)。レベルは日本の国試と同じかやや簡単(但し日本の国試では問われない避妊関連や、倫理の問題は要勉強)なので、ともかくPLABABLEかMedRevisionで間違えた問題を潰していけば良いと思います。1回目受けた時は研修医明けで受けたのでまだ知識が残っていました。2回目に受けた時は普段眼科しかやっていないため苦労しましたが、そこまで専門的なことは聞かれないので合格点にのせることは出来ました。

【PLAB2に関して】

 管理人さんをはじめ複数の方が合格体験記を書かれていますが、日本で生まれ育ち、日本の医学部を卒業した方にとって躓くポイントはほぼ同じように感じます。管理人さんの投稿を始め、英語で書かれたサイトには載っていない最新でリアルな情報がこのブログには多くありますので是非一度目を通すことをお勧めします。私が以下書くことも管理人さんや他の方のほぼ受け売りだと思います。

【PLAB2を受けるにあたって知っておいてほしいこと】

(1) PLAB2は”落ちる”人がたくさんいる試験である。

 私の学生時代は4年生のときにCBTと臨床実習前のOSCEがあっただけで、OSCEは”お作法”だけできれば受かる試験でした。GMCのホームページや動画、またPLAB2の試験官も「これはあなたたちを落とす試験ではありません。あなたたちがpassionateでsafeな医師であることを示せばいいだけです。PLAB式、GMC式、イギリス式などは存在せず、どの国でも同じです。あなたたちが普段臨床でやっていることをそのままやってもればいいです。」と言っていましたが、実際はPLAB2のチェック項目、要求に沿って回答しなければ得点にならず合格できません。後述の対策が必要になります。

(2) USMLE Step2 CSとは似て非なる試験である。

 PLAB受験を考えている人はUSMLEについても大まかな情報は知っていると思いますが、同じOSCE試験であるStep2 CS (現在は中止されていますが)とは行うこと、採点項目が全く違います。Step2 CSでは(i) CIS (communication and interpersonal skills), (ii) ICE (integrated clinical encounter), (iii) SEP (spoken English proficiency)の3項目が評価されており、試験時間も問診身体診察に15分、カルテ記載に5分です。一方で、PLABの評価項目は、(i) data gathering, technical, and assessment skills (ii) clinical management skills, (iii) IPS (interpersonal skills)で、試験時間はmanagementまでを口頭で8分で終わらせなければいけません。後述しますが、PLAB2では(ii)managementが1/3あり、ここで失点する人が多いと思います。短時間でmanagementまで辿り着き、managementでも突っ込んだ内容を話す、というのが大事です。

 USMLE Step2 CSでは2015年くらいから英語の採点がかなり厳しくなり、日本人はSEPで落とされると聞きました。PLAB2では英語がネイティブでないからといって落とされることはありません(そもそもPLAB2の受験者は大半がイギリス以外からの受験者で、英語も母語ではない人が多い)。しかし8分で終わらせないといけないので、言い淀んでいる隙はありません。a/the, 単数/複数, 時制の間違えや、やや不自然な表現でも伝われば大丈夫ですが、ともかく話し続けなければいけないのでそれ相応の英語は必要です(一見すると項目に英語はありませんが、英語でスムーズにコミュニケーションが取れなければ必要な情報を聞き出せていない、情報を伝えられていないと判断され全てで点数が下がるのが、IELTSといいPLABといいイギリスらしい試験だと思います)。

【1回目と2回目で見直したこと】

(1) 練習相手と毎日練習する

 1回目受験した時は(i) PLAB1から時間が経ちすぎていたことによるモチベーションの低下、(ii) 臨床と研究の両立による忙しさ、(iii) 相手にsympathy/empathyしreflectしていれば受かるだろうという幻想(後述のDr. Aroraの影響が強かった)により、お互いに症例を出し合う練習は週1-2やるかやらないかでした。しかし上述の通り、8分で終わらせる型を作ることと、できる限り教材に出ている症例をカバーするには毎日練習することが大事です。

 私はcommon stationで知り合ったフィリピン人で(彼は既にイギリスで働いている)、その方の大学の同級生たちが私と同時期に受けるということで、練習相手になってくれました。京大式カードのように、スライドAに症例を、スライドBに教材のページ数を記載し、オンライン上のダーツ(number picker)に数字を読み込ませ、順番に症例を回していきました(面倒くさい作業をシステム化したフィリピン人の友人たちに感謝しています)。時間が合うかどうか(時差、受験日など)、ちゃんと時間通りに来てくれるか、相手も同じ教材を使っていて同じ規準を共有しているか、など、”適切な”練習相手を探すことは本当に大変だと思います。しかしながら管理人さんもその他の先生方も、予備校やfacebook/whatsappなどで良い練習相手を見つけていたので、まずは練習相手を見つけることからだと思います。

 大学での多忙さやモチベーションの問題から2回目のときも思うように勉強が捗りませんでしたが、試験1ヶ月前にこのブログと出会い何をやるべきか目標が明確化して毎日の練習を開始しました。当然時間不足でしたが、何とか教材(私はDr Moを使いました)を終わらせました。働きながらであれば理想は3ヶ月くらい必要ですが集中力の問題もあり天秤かなと思います。

(2) 最新の情報を手に入れる

 PLAB2は情報戦です。1-2年前に書かれた情報は古いこともあり、予備校やfacebook/whatsappのグループも出現しては消失し、というのを繰り返しています。恐らくインド人、パキスタン人、中東系の方々は大学の同級生や職場の人でもPLABを受ける人が多いため、内輪で情報を共有し、最新の情報や教材が出回るのだと思います。勿論、倫理的に違反している投稿も見かけますが、他の多くの受験生たちは結局そうやって情報を仕入れているので、Facebook, whatsapp, X, 予備校の同級生などから情報にはアンテナを貼っていた方が良いと思います。その情報に基づいて(1)の練習相手と練習をすれば良いと思います。

 実際の試験は教材と少しずれているシナリオになっていることもありますが、概ね教材通りに進んでいくため教材や予想問題を仕入れることが大切だと思います。 

(3) 基本的に確定診断をつけ、ある程度の道筋を示す

 実臨床をやっていれば8分で確定診断に辿り着くことは多くの症例で不可能ですが、PLAB2では病歴、身体診察、血液検査/尿検査/レントゲン検査/心電図で、ほぼ診断名を1つに絞り込む必要があります。そのためある程度割り切る必要があります。1回目のときは、この病気からもしれないしあの病気かもしれない、手術かもしれないし薬物治療かもしれない、みたいに曖昧にして答えることが多かったですが、2回目のときは、今の時点で最もこの病気が考えられ、この病気はこうで〜、入院/外来で、上級医にも確認しますがその一般的な治療は〜で、〜いう症状が出たら危険ですのですぐに連絡ください、とはっきり答えるようにしました。そのためにも診断に結びつく質問が何かを勉強し、一般的な治療法に関して答えられるようにする必要があります。

(4) managementに辿り着く&managementの型を身につける

 1回目のときはdata gatheringに時間を大幅に割いてしまうことが多かったため、2回目のときは長くても5分以内で質問を終わらせることを目標にしました。管理人さんや他の方も言及している通りで、7分〜7分30秒で練習するのがいいと思います。また1回目と2回目で得点が大きく伸びたのはmanagementで、ここでdata gathering, IPSなみに得点できたことが合格に結びつきました。管理人さんの言う通り、Diagnosis, Senior, Explanation, Admission, Referral, Medication, Intervention, Follow-up, Red flagsという流れ(safety nettingまで時間内に辿り着く!)を反復することが大切だと思います。Managementの内容も知らなければ答えられないので(特に産婦人科や小児科など)、上記の大まかな流れにspecificな回答を付け加えていくことが大切だと思います。

【予備校、テキストに関して】

私は以下の予備校、テキストを使いました。

・Dr Mo Sobhyのテキスト

 私はこちらの予備校には通わなかったのですが、直前1ヶ月の練習にはこちらのテキストを用いました。単元ごとのstructureに加え、Dr. Arora(後述)のthree bubblesも含まれていますし、managementも必要十分でした。最新のrecallが多少抜けていますが、Dr Moのテキストを暗記すれば知識は十分だと思います。

 但し、管理人さんや他の方も言及されている通り、PLAB予備校業界は流行り廃りが激しいのでこの情報がいつまで正しいかはわかりません。

・直前の問題

 これはmustだと思います。知らなければ8分間では診断がつかなかったり、治療法を知らなかったりする問題もあります。

・Dr Boseの模試

 管理人さんのブログから教えていただいた模試です。Whatsappで連絡をとり、wiseで海外送金し、オンラインで模試を受け相手は顔を見せない、というやや謎めいたサービスです。しかしながら実際の試験にも近いですし、詳細なフィードバックをくれます。私は試験まで時間がなかったため2回しか受けませんでしたが(時間は要調整ですが、イギリスの夜間に行うことが多いため、日本時間の朝5時から模試を受けました)、毎日の練習の良かった点悪かった点を把握することができ、ブラッシュアップすることができました。お勧めです。

・Aspire

 教材だけ目を通しましたが、Dr Moよりも症例数があり、載っていない疾患をこちらで補填しました。ただしstructureが弱いのでDr Moをベースにこちらを加えると良いと思います。特に半年〜1年ごとに別冊が出るようで、そちらに最新の予想問題が出ており、役立ちました。

・Common Stations by Dr. Hamed

 1回目のPLAB2を準備したときに使いました。2019年頃にインターネットで調べた頃はこの予備校が最も評判がよさそうでした。2週間の現地授業でしたが、朝9時から夜7-8時(昼休憩が1時間半くらい)の詰め込み教育でした。

 良かった点は、(i) 練習相手となるパートナーを見つけることができる、(ii) 大まかなstructureを学ぶことができる。の2点でした。一番良かったのは(i)の練習相手を見つけることができたことです。前述の通り、いかに信頼できるパートナーと練習するかがPLAB2合格の鍵だと思うのですが、幸いCommon Stationsに通った時にフィリピン出身の医師たちと仲良くなることができました。

 悪い点は、管理人さんのブログにもありますが、(i) 講師は生徒が遅刻することに怒るのに対して、講師も時間通りには授業を開始しない、(ii) 予備校の立地がロンドンでも治安の悪いところにある、特に予備校が勧める寮/宿泊施設は自衛隊の兵舎内よりも遥かに不衛生、(iii) data gatheringに重きを置きすぎる、です。また、最近はscenarioも古くなってしまっているようです。

・Arora Medical Education

 Birmingham郊外にある予備校ですが、私はオンラインコースだけを受講しました。Dr. Aroraはthree bubbles (red flags, psychosocial issues, ICE)を問診で聞き、それをmanagementにも反映するよう指導しています(YouTubeに彼の動画も多くあります)。良い点はstructureが他の予備校よりもしっかりしていますが、最大の弱点はrecallを使わない&一般化しすぎている、点だと思います。実臨床ではDr. Aroraのやり方も参考になりますが、PLAB2の多くの問題では特定の疾患が想起されています。red flag除外のため、ある程度structureに沿った質問をすることは大事なのですが、どうしても特定の質問をしなければ解答に辿り着きません。確かにGPや一般内科の先生ならば色々鑑別疾患が上がり質問の感度特異度も考えられるでしょうが、そうでない場合は”狙った質問”を聞いた方がいいと思います。これは私が眼科医をしているからというのもあると思います(眼科だと割と1対1の問診/所見が大事になるため)。Dr. Aroraの模試も受けましたが、確定診断をつけられない問題が多く、実際の問題とは違い試験の観点からはあまり役立ちませんでした。また、実際の試験ではpsychosocial issuesやICEを突っ込むstationはそう多くはないので、これも他の予備校の教材を使ってこのパターンではICEをしっかりする、家庭環境のことを突っ込んで聞いて介入する、と個別の対応が必要だと思います(ICEは基本聞いた方がよいすが、そのウエイトをどうするかということです)。模試をやってくれる先生は丁寧でした。

 これはDr. Aroraに限りませんが、予備校はdata gatheringに重きを置きすぎで、managementをなおざりにする傾向があります。Dr. Aroraはたとえ1分半〜2分であってもManagementは十分、と言っていましたが、これもお勧めはできません。多くの日本人受験生にとって英語がネイティブではないし、患者の反応を聞きながら説明することを考えると3分以上は必要だと思います。

【最後に】

短くしようと試みましたが、気持ちが抑えられず、長文で寄稿させてもらいました(他人のブログなのに自由に書かせてくださり、管理人さんには感謝です)。1回目のPLAB2を受ける前は、たとえ落ちても日本で働けばよいくらいに思っていましたが、落ちたときは想定外に悔しく(受験を含め筆記試験で失敗したことは何回もありますが、ここまで自分なりに日本で頑張ってきたのに、あの受験会場にいたやつらが自分よりも”面接”で上だったという事実を受け入れられませんでした。実際は”面接”ではなく対策をすれば点を取れる試験だとは思いますが。)、2回目を受けることにしました。

管理人さんやその他合格者の先生方との出会い、練習相手となってくれたフィリピンの友人たち、そして深夜早朝にぶつぶつ英語を話していてもそっと応援してくれた職場の先生たちの協力がなければここまで来られませんでした。この場を借りて感謝申し上げます。

これからPLAB2を受ける皆さんはぜひ参考にされてください。まとまりのないブログですがお役に立てて光栄です。AUさん、ご寄稿ありがとうございました!

21/3/24追記:Dr Boseに掲載許可を得ました。模試をご希望の方は先生のWhatsappビジネスアカウントに連絡してください。→ +44 7425 055579

19ヶ月目:宗教と緩和ケア、学生教育

宗教と終末期のケア

現在の勤務先は患者さんの9割が白人英国人なので、病院で出会う宗教は主にプロテスタントだ。緩和ケアに関わった患者さんで、驚くほどご本人も家族も穏やかだなという印象の人が2人いた。

ひとりは、50代のかなり進行した状況で診断された乳がんの患者さんで、まだティーンエイジャーの子どもが3人いた。私はご本人がまだ元気だった頃に病棟で担当していた。おしゃべりが大好きな人で、こどもたちのためにまだまだ長生きしたいと仰っていた。次に会ったのは病状が急激に悪化してICUに入院したときだった。よくある名前だったので、彼女の名前を緩和ケア医/ICUのリストに発見したときはまさかと思ったが、残念ながら彼女だった。緩和ケア医からの夫と子どもたちへの説明に同席させてもらった。子どもたちは驚くほど穏やかで談笑をしていて、もしかしてまだ死が理解できないんだろうかとも思ったが、どうも患者さんの夫によると信仰が関係しているようだった。「私たちは敬虔なクリスチャンで、死は肉体の死にすぎず、妻の魂はずっと私たちと共にあるのだと子どもにもしっかり教えています」と言っていた。

もうひとりは70代の乳がんの患者さんで、何十年も前に治療した乳がんの小脳転移で再発が判明した。夫とは50年も連れ添っているらしいのに、病室に行くといつも手を握り合って、一言いうごとに見つめあって、まるで新婚さんみたいだった。がんが関係あるのかは知らないが(イギリスは日本よりカウンセリングが一般的なので、がんのような大病を患ったことがカップル関係にもたらす変化へのカウンセリングも進んでいる)、教会主導のカップルカウンセリングを受けてからずっとこんな感じなのだそう。この夫婦も非常に敬虔なクリスチャンで、もちろん死は悲しいけれど我々はまた結ばれるのでそれまでの辛抱というような考えを持っている人たちだった。愛する人が死に行く中で、こういう信仰がもつ癒しの力は計り知れないなと思った。

現在の勤務先にはChaplain(聖職者)が3人いて、2人はキリスト教の牧師で、1人は仏教徒だ。

この頃はイングランドでは敬虔なキリスト教徒というのは少なく、聞かれるとクリスチャンと答えるけれども日頃は信仰心を持っていないし教会にも行かない、クリスマスやイースターのお祝いだけはする、というような人が多い。(日本で「海外で自分は無宗教だというのは危険」というような言論が流布しているけれど、イングランドに限ってはそんなことはない。これは都会・田舎や教育レベルに関わらず病院で医師/患者として会ったご高齢の患者さんを見ていてもそうだし、友達の両親の話を聞いてもそうだし、大学などで会った友達や同い年くらいの人たちに至っては殊更そうである。)

なので、Chaplainとお話ししますか?と聞くと、熱烈なYesは意外と少なく、「信仰心はないけどお話しだけならリラックスできるかも」と控えめに希望する人もいれば、信仰心が全くないのでChaplainは不要だと一蹴する人もいる。こういう信仰心が全くない人にとって強い支えとなるのが、意外にも仏教徒のChaplainだ(お坊さん、と呼ぶべきだろうか?)。リファラルを書く我々からは、このお坊さんは「無宗教枠」の存在になっている。

当院のお坊さんは坊主で強面で眼光鋭く、雰囲気はというとパブでドラッグを捌いてそうな、そういう感じだ。あんまり笑わないし同僚の牧師が放つ穏やかな雰囲気とは対照的に異彩を放っている。日本育ちが想像するお坊さんの雰囲気とはだいぶ違うかもしれない。こういう人なので、特に若年〜中年男性に大人気だ。

イギリスでは今、仏教が着実に人気を増している。大学にいた時に、私が哲学科にいるからそう感じるのかとも思っていたが(パーフィットの哲学と親和性が高いと友達が話していた)、大学の外でもこころの平穏が欲しい若い人たちの間で仏教に興味がある人がまあまあいるように感じる。友達の彼氏のイギリス人ミュージシャンもクリスチャンから改宗した仏教徒で、毎朝30分瞑想をしている。瞑想、ヨガ(は仏教じゃないと思うけど、遠くの国のmindfulnessのプラクティスという点で似ている)、など社会的に関心の高まっている・趣味とする人が多い事柄とも相性が良いのもまた、仏教への関心が高まっている一因かもしれない。

緩和ケア医によると、イングランドで少なくともその先生が会ったことのある仏教徒は、死について非常にオープンに話す・病気のかなり序盤から死を受け入れる傾向にあるのだそう。イングランドでは生まれつきの仏教徒は珍しく、多くの人が進んで改宗した仏教徒である(みんなお坊さんレベルに仏教を知っている・信仰している)というのがその理由かもしれない。

私は日本育ちながら仏教のことは全然知らないので、何か本を読もうと思いつつ5年くらい経ってしまった。あと5年くらいの間に本を読みたいと思う。何か苦しむ患者さんにかける言葉のヒントが見つかるかもしれない。それから、NHSで働き始めた年の冬のA&Eでは、仕事があまりにも辛かったので、自分にも信仰があればいいのになあと思う時が何度もあった。イギリスでは特に若い女性は、こういう心境になったとき、水晶や誕生石などのペンダントや指輪を買って慰めにすることがあるらしい。「自分にはこのお守りがあるから絶対に大丈夫」という形で自分を鼓舞したり不安を追いやったりする効果があるようだ。何か救いが欲しい時、でも既存の確立された宗教を学ぶ元気はないとき、怪しい新興宗教に連れていかれる前に皆さんも宝石屋さんに行ってほしい。

学生教育

イギリスの医学部は5年制だ。一部大学では6年制を取っており別途研究の資格を取得できるほか、編入生(一度別の学部を卒業した人たち)だと4年で医師になれるが、基本的には医学部は5年だ。

イギリスでは3年生から病院研修が始まる(日本では6年制で、5年生から)。学生がローテーションすることになっている科では、コンサルタントのほか、私のような下っ端のSHOでもインフォーマルな形で教育に関わることになる。

(もちろんフォーマルな教育への関わりもある。どの病院でもフォーマルな形での教育への参加がSHOには推奨されているので、OSCEの模擬患者・試験官をしたり、小グループを率いてBedside teachingを行ったりすることができる。その後にはフィードバックを得られるので、それを自分のポートフォリオに添付して、自分の業績とすることができる。イギリスで働き始める人で、IMTやCSTに応募する予定のある人は、積極的にやったほうがいいと思う。GPや放射線科や精神科を考えている人は不要。)

腫瘍内科には4年生の学生がたくさん回ってくるので、特に2月中旬からは、ほぼ毎日誰かの相手をしていた。午前中だけの関わりなのだが、それでも学生それぞれの個性や知識量の違いがはっきりとわかるので、思っていたより楽しく、今日の学生さんはどんな人だろうと毎日楽しみにしている。

学生は回診について回るほか、時間があれば患者さんをclerkingしてそれを私に発表し、私は以下のような採点表をつけて学生の学校にメールで送る。他には、学生が希望すれば退院時サマリーや回診カルテを書いてもらうこともある。

この採点表は、私の名前・ポジションを記載するところから始まる。丁寧な学生さんだと、名前・ポジションに加えてこのアセスメント表全体を私に口頭で確認して仕上げて、確認メールだけを私に送ってくる(アセスメントを放置されて送ってもらえない、みたいなトラブルを過去に経験したのかもしれない)。名前・ポジションだけを記載して送ってくる人もいれば、全く何も記載せず送ってくる人もいる。このへんも性格の違いが出ていて面白い。

GPへの退院時レターについては、「前にやったことがある」といってまるでFY1かのようにさっさと仕上げる人もいれば、初めてだからと3時間くらいかけても仕上げられなくて後日完成品を持ってくる人や、レターを書くのが初めてで書き出しを「いつもお世話になっております」と日本風にする人なんかがいて、それも良い。私もイギリスで働き始めた当初は「いつもお世話になっております」的な文言で手紙を始めていたので、イギリス育ちでも退院時レターを書いたことがない人は同じ間違いをするんだなと新たな発見があった(別に書いても良いけど、誰もやってないのでちょっと変わった医者だなと思われるかもしれない)。

私が業務中なのに学生が図々しく色々な質問をしてきて業務が滞ることもあったし(でも熱心なのは良いことなので喜んで教えて少し残業した;どうもこの学生は前日の学生からの前情報で、私を親切で教育熱心なSHOと思い込んでいたらしい)、逆に何を聞いても「別に」という感じでやる気のなさが行動からも雰囲気からも言葉からも溢れ出ているような学生もいた。やることないからもう好きにしていいよ、と言った場合に、喜んで病棟を去る学生もいれば、その前に…とたくさん質問をしたり患者さんのカルテを全部読み始めたりする学生もいた。腫瘍内科的救急疾患について尋ねると、すらすらと暗誦して今すぐにでもFY1として働けそうな人もいれば、うーんと悩んで全然答えられない人もいた。最初の方にあった学生は皆とても優秀だったので、イギリスの学生は質が高いなと驚いていたのだが、しばらくいろんな人に会っていると、本当に学生もいろいろだなとわかって少し安心した。

この半年くらいの新出単語

このブログは日記も兼ねているので、あとで読み返して「ああこんな表現や単語を目新しく感じていたんだなあ」と懐かしく振り返りたい。

ちなみに私はBullet Journalメソッドの大ファンで、もう5年くらいは既製品のスケジュール帳ではなくドット柄のモレスキンをスケジュール手帳として(スマホのカレンダーと並行して)使っていて、各ページの左下に線を引いて英語とイタリア語の新出語彙・表現をかくだけの欄を設けている。本気で語学を勉強している人は別途単語帳とかAnkiアプリなんかを使ったほうがいいと思うのだが、仕事の片手間にやる分には、このくらいがちょうどいいし、あえて別のノートを使わないことで振り返りも手軽なのでおすすめだ。

abut: be next to or have a common boundary with. “A pseudoaneurysm abutting nephrostomy”

Blimey!: God blinded me の略だそうで、患者さんもスタッフもびっくりした時に結構使っている。イギリス英語。私も驚いた時に咄嗟にBlimey!と言えるようになりたい。

stroppy:bad-tempered & argumentative.ストラッピーと聞こえて、話の雰囲気から言葉の意味は理解したものの「ふーんstrappyにそんな意味があるんだなあ」と思っていたらstroppyだった。イギリス英語。

cross: annoyed. “He was so cross!” これもよく聞く。イギリス英語。

specious: superficially plausible but actually wrong

test the water: to try to find out what reaction an action or idea will get before you do it.

in a pickle: in a difficult situation

wired: nervous, edge, tense

petrified: frightened

not pulling his weight

give time to compose oneself

bread & butter

no longer amenable to chemotherapy; cardiac failure not amenable to medical treatment

uncanny

life expectancy would still most likely be measured in months./ his prognosis is likley to be only measured in terms of months.

IMTインタビュー (19ヶ月目)

IMTインタビューが終わった。Oriel(トレーニングプログラムに応募するためのウェブサイト)の応募書類提出締切が11月、Longlistingが12月初旬、Shortlistingが12月中旬、Interview Bookingが12月下旬で、1月末にインタビューを受けた。

今年は4:1(1つのポジションに4人が応募)で過去最高の倍率を記録したそうで、希望地に行きたいなら大変なのはもちろん、「全英どこでもいいからポストが欲しい」という人でも結構大変な年になったと思う。具体的にいうと、6174人の応募者がおり、3682人がインタビューにこぎつけた。この後マッチングを経て、1603人がポストに就くことができる。

まずShortlistingで2492人が選考から落ちた。運よくインタビューを受けられてもAppointabilityを満たさず落とされた人が何人かいたみたいだ。それからインタビュー数週間前まで知らなかったのだが、Shortlistingに使われる書類審査の点数(評価項目は公式サイトを参照)と、インタビューの点数とは全く別なので、書類審査の点が良くてもインタビューの準備はがんばらなくてはならない。

2024年に応募した人たちの書類選考の点数

Interview Bookingは千人規模の応募者が一斉にサイトにアクセスする関係で、何度もエラーが表示され、予約に辿り着くまでが一苦労だった。運がいいと2月中旬の日程で予約できるが、運が悪いと1月初旬の日付しか選択できない。なので、最悪の場合に備えて12月初めくらいから練習を開始するのがいいと思う。

私が練習に使ったのは、主に以下の3つ:

Medibuddyは12月初旬に購読開始していたのだが、1月の第一週目にストがあるからその時にやろうと思って全くやる気が出ず、結局ストの時期もお正月気分でダラダラと過ごしてしまったため、1月第二週くらいに焦って詰め込みを開始した(直前まで先延ばしにするいつものパターンで反省している)。

1月第一週の時期にイギリス日本人医師の会で会ったFY2にOptimise Interviewsを勧められたので、購読開始し、模試を受けた。

あとは、同僚・Optimise Interviewsのチャットグループの参加者たちとオンラインでひたすら練習を繰り返したほか、仲良しのレジストラ2名、IMT1名、そしてコンサルタント1名にも実際の試験形式でインタビューの練習をしてもらった。雰囲気はPLAB2準備のあの感じだ。

インタビュー形式は今年から微妙にフォーマットが変わって、

  1. 2 min presentation + 4 min Q&A
  2. Clinical scenario + 7 min Q&A + 1 min handover
  3. Ethical scenario

だった。2分間のプレゼンテーションが新しいようだ。当日は原稿を印刷した紙をガイドとして手元に持っていてもいいらしいのだが、私は1分50秒の原稿を丸暗記した。Medibuddyは2分間のプレゼンテーション用意にとても有用だったほか、問題が多いのも良い点だと思う。でも高得点を目指すなら、高得点に至るコツが詰め込んであるのでOptimise Interviewsの方がいいかもしれない。

部屋のset upで気をつけたのは、下記の項目:

  • 安定したインターネット
  • 事前のコネクションテスト
  • 電球の位置(めがねに反射しないか、自分の影と被らないか)
  • カメラの位置(目線の高さにくるようにラップトップを書見台においた、本番はできるだけカメラを見て話した、自分が画面の中心にくるように座った)
  • 部屋の掃除(インタビュー前に部屋をぐるりと映すように求められる)

部屋は別に汚くてもいいけれどたくさんのオーディエンスに散らかった部屋をみられるのはちょっと恥ずかしいかもしれない。本番はスーツを着て臨んだ。

特に1のセクションは自分の素質を具体例を用いてバックアップするのが大事だそうで、私は使いまわせる複数のケース(例えば、ペニシリンアレルギーの人にペニシリン系抗菌薬を処方してしまった、というケースならば、「失敗したこと」にも「クリニカルガバナンス」にも「コミュニケーションエラー」にも使える)を用意していたにもかかわらず、当日は緊張してどれも具体例を出さないまま終わってしまった。クリニカルは想定の範囲内のケースだったので良かったが、倫理は想定していない上に個人的には倫理的問題とも呼べない質問だったので、とても残念だ。倫理が普通の倫理問題だったらもう少し順位が高かったと思うので、インタビューのスコアは本当に運次第なところがある。

CVをPersonal Specificationと結びつけて話し、自分がすばらしいIMTになれることをいかにアピールするか、というのがインタビューの目的なので、それに特化した練習をする必要があると思う。このへんもOIが詳しい。

緊張のあまり頭が真っ白になりつつベラベラ口だけが動いて、自分はこんなに英語が話せるのかとびっくりした。

今週結果が返ってきて、70/80点、順位は1300番台だった。1点の違いが大きな順位差となってしまうのが、この棒グラフをみるとわかると思う。得意の倫理で得点率が低かったが、面接で倫理問題として問われた問題は全然倫理問題じゃなかったので仕方ない。上位39%で、悪くはないがこれだとロンドンは難しいかなという順位なので(ロンドンに行きたいなら1000ー1200番台まで)、ロンドンもアプライしつつオックスフォードのdeanaryの病院になりそうだなと思っている。

OIのレジストラいわく、「地理的な環境がプライオリティなら、1500位より順位が高ければロンドン以外ならどこでも入れる。去年は1600のポストしかなかったのに2300位の受験生がポジションを得たので、まあまあの人数がIMT以外のことをすることに決めたことが推測できる。」らしい。どうも、IMTの他に麻酔科や放射線科やGPにも並行して出願している人たちがまあまあいるようで、蓋を開けてみると思ったよりいいポストに就けることが多いらしい。運が良ければロンドン、悪くてもオックスフォードには戻れそうでよかった。

これから1ヶ月後の締め切りまでに、ロンドン、テームズバリー、ケントサリーサセックス、そしてセヴァンの地域のトレーニングプログラム(全部で400件近くある)を一つ一つ順位付けして提出する作業が待っている。私は住みたい地域限定なのでこの数だが、全英どこでもいいからトレーニングポストが欲しい人は1600件を地道に並べる作業で気が遠くなっていることだろう。私にとってはトレーニング内容より病院の地理的な条件が優先事項なので、エクセル上で地理的な条件に合わせて色をつけて、複数のポストをまとめてブロックとして順位決めすることにした。新生活を想って少しわくわくする。

右上の「英国臨床留学の最新情報」にいくつか病院評価を調べられるサイトを追加した。CQCがざっと見通せて一番使い勝手が良いかもしれない。


年々うなぎ登りのIMTの倍率や、PA拡大に伴い、医学部を卒業後に臨床以外の道を選ばざるを得ない人がどんどん増えていくことが予想されていて、多くの医師の嘆きがRedditやTwitterに溢れている。医師の海外流出もどんどん加速しそうだ(ちなみにGPにはオーストラリアのほかカナダも人気らしい、QOLがよく給料もうんと良いのだとか)。

残念ながらPA・AAはGMCによって管理されることになってしまったので、今後もますます医師とPA・AAとの違いは曖昧になっていきそうな予感がする。医師不足と言いながら医師のトレーニングポストは増やさないでPAを増やしている政府には本当にがっかりする。

Physician Associates “Noctors”

この記事を書いた時から、医師とPhysician Associates (PA) / Anaesthesia Associates (AA) との対立はさらに深刻さを増している。あまりの理不尽に医学部志望者が減る始末である。このブログにはイギリスで臨床医として働く上で良いことも悪いことも書いているが、今回の話はこれまでに書き散らしたNHSの悪いところを凌駕する内容なので、心して読んでほしい。問題があまりに山積していてどこから書いたら良いかわからないくらいで、読みづらいところもあり申し訳ないが、英国で臨床に従事することを考えている医師には必読の内容だと思う。英国で患者さんになる予定のある人も自分の身を守るためにぜひ読んで欲しい。できるだけツイッターから引っ張ってきた医師たちの証言を載せるようにした。

  1. Physician Associates (PA)とは
    1. 政府の医療コスト削減策
    2. RCGPの見方
  2. PAの現状
    1. Undifferentiated Patientsを診察する危険なPA
    2. 自らを医師と詐称するPA
    3. 不法に処方を行うが罰されないPA
    4. 医師の手技や教育機会や就労機会を奪うPA
    5. False Equivalencyに基づいて能力以上のポジションに就くPA
    6. 規制に向けて
  3. 若手医師の嘆き
  4. まとめ

Physician Associates (PA)とは

英国医学会 (Royal College of Physicians) はPAを以下のように説明している:


PAは、コンサルタントまたはGPの指導のもと、多職種チームの一員として働くhealthcare professionalsで、一次、二次、およびコミュニティケアの環境で患者にケアを提供します。PAは、政府のMedical associate professions(MAPs)グループの一部であり、イギリスで2003年から働いています。

Who are physician associates?

PAは3年制の理系学部を卒業したのちに、2年制のPA修士課程を修了することで得られる資格だ(無資格で働いているPAもいる)。AAはそれの麻酔科に特化した業種の人だちだと思ってほしい。

政府の医療コスト削減策

現在PAやAAが大幅に増えているのは国の政策だ。

NHS Long Term Workforce Plan は、パンデミックからいまだに立ち直れておらずWaiting listが伸び続けるNHSを建て直す策として考案されたもので、そこにはPA/AAの積極的な活用が明記されている。

国が特に推進しているのはPAのGP surgeryでの雇用拡大・AAの麻酔科での雇用拡大で、現在はなんとPAをGPにする案まで検討されている。医学部を出ていない人を医師にするという前代未聞の政策に医師もACP(Advanced Care Practitioner – 看護師出身で特定分野において更なる教育を受けた人たちで、医師同様、PAより勉強期間も実践期間も長く知識もある)も大激怒しているが、国の政策なのでこのまま実施に至りそうな気がしている。

ACP/PA/AAで仕事を回す方がコストが安いので今後NHSは主にACP/PA/AAで回されて、医師の診察を受けたい人はプライベートの病院に行かなくてはならないようになるかもしれないと言われている。歯科医療はその好例で、1990年代には6%だったプライベートの歯科医院は、NHS資金の減少で今や全体の75%にまで膨れ上がっており、金銭的にある程度余裕のある人はプライベートの歯科にかかるようになっている(これは別の記事で触れたのでそちらを参照してほしい)。

RCGPの見方

驚くことに、RCGP(Royal College of General Practitioners);英国GP学会は、PA拡大に賛成しているらしい。RCGPのトップの一人は息子がPAらしく、利益相反もありそうだ。RCGPとは裏腹に、一般のGPたちはPAに反対する声が大きい仕事も奪われているので当然だろうが、RCGPがメンバーである一般のGPたちの総意を反映していないと怒っている。GP不足にも関わらず、PAのせいでGPが仕事にありつけないと嘆いているのがにわかには信じられない。「PAは医師を置換するための存在ではない」という言葉の空虚さをおもう。

PAの現状

現状PAには規制もRegistryもない。

先ほどPAは2年の修士だと説明したが、実は資格がなくてもPAになれるようだ。ちなみにPA課程に入学するのに必要な成績は医学部のそれとは難易度が天と地ほど違うし、修士中の試験と最後に受ける認定試験は誰も落ちない試験で、合格基準は正答率40%以上という試験の意味があるのか謎な代物で、合格率100%だそうだ。これを指摘すると「医師はエリート主義だ」と反論するPAがいるが、難易度の高い試験を(入試から卒業までずっと)くぐり抜け続けた学生が5-6年間かけて医学を学んだ結果と、平凡な学力の学生が誰も落ちない試験を受けて2年間で“医学を学んだ”結果が同じだと本気で信じられる人はどうかしていると思う。

PAは一応、医師の監督下で働くことになっているのだが、それは守られていないことが多い。

Undifferentiated Patientsを診察する危険なPA

すでに割と単純な症例でのPAによる重大な医療事故が複数報告されている。特に有名なのは、若い女性の深部静脈血栓が2度見逃されて死亡に至った例だ。呼吸苦とふくらはぎ痛でGPを受診した女性に、PAは一度目は「Long COVID+アキレス腱痛」という診断をつけ痛み止めで帰宅とした。二度目の受診時には「不安症」という診断でβブロッカーを処方して帰宅とし、その数日後に女性は肺塞栓症で死亡した。呼吸苦+ふくらはぎ痛で肺塞栓症を考慮するのは医学部生でも当たり前の知識だと思うがPAはこれを二度も見逃してしまった。女性は医師の診察を受けたと亡くなるまでずっと思っていたそうだが(メッセージ記録などから)、実は一度も医師の診察を受けていなかった。PAにはその他医療職が受けるような規制がないので、このPEを見逃したPAは今もどこか別のGPでPAをしているそうだ。PAは処方できないはずだが、このような結果になってしまったのは、「医師の監督」がうまく機能していない証拠である。

また別の例では、妊娠中の女性が胸のしこりでGP受診した際にPAは「乳腺炎」の診断で「出産後に来院するように」というような助言をし、結局乳がんが見つかった時には全身転移しており女性は乳児を残して亡くなった。GPでは胸のしこりは2WW referral として2週間以内にエコー検査と専門医診察を組まなければならないのだが、PAはそれを知らなかったようだ。

背部痛とPSA検査希望で来院した人にPSA検査をしたはいいものの、上昇しているPSAの意味がわからなかったのか結果説明の予定を組まず、再度患者さんが背部痛で受診した際にも特に説明をせず、専門医へのレファラルも組まず、結局診断がついたのは患者さんがMSCCで救急受診したときだった、というような例もあった。

上記3例はかなり教科書的なケースなので医師が診ていたら予後が変わっていたと思われる。そのため、PAが何をして良い・してはいけないかの規制が整備されるまではGP surgeryでのPA雇用は禁止すべきとの提言をしている団体もあるが今もPAは普通にGP surgeryや病院で働いている。

腫瘍内科で働いていると、GPは高リスクな仕事だとつくづく思う。背部痛でGP受診する患者さんの95%は本当に大したことない筋骨格系の痛みなのだろうが、私が診るのはいつも5%の残念だった人なので、GPの仕事の難しさを痛感する。患者さんは時にGPを責めるが私は責められない。レッドフラッグは常に明らかなわけではなく、たとえばがんの既往はなく脊椎に骨転移してからsciatica様の症状からprimaryのがんが見つかる人もいる。「週3でジムに通い重いバーベルを持ち上げるのが趣味の元来健康な20歳男性、主訴はバーベルを落としてからの頚部痛」みたいなプレゼンテーションで、当初GPでMSK painと誤診されたと憤る患者さん家族もいたが、この主訴で限られた検査で頸椎のsarcomaを疑える医師がどれだけいるだろうか。

医学部の基礎勉強の上に長い専門トレーニングを積んだGPですら間違うことがあるほどPrimary Careは危険な分野なので、GPの仕事はPAが置き換えられるようなものとは思えないのだが、なぜかPAは自らの診療能力にやたらと自信満々だ。

自らを医師と詐称するPA

PAたちは、「なぜ医師よりPAが良いのか?」をテーマに、「医師よりQOLが高い」「(若手)医師より高級取り」「面倒なローテーションをこなさなくても初めから一つの科で集中してトレーニングを受けられる」といった謳い文句で学生を勧誘している。これはコンサルタントになるために好きでもないローテや夜勤や週末オンコールをservice provisionのためだけにこなしている医師たちからすると非常に侮辱的だ。(PAは勉強期間もトレーニング期間も医師より少ないのに1年目のPAはすでに順調に進んだ5年目の医師と同等の給与を支給される上に、夜勤もon-callもなく業務は9時から17時までだ。医師はトレーニング期間中複数の病院を転々としなくてはならないのに、PAは一つの病院でずっと仕事ができる。ロンドンではロンドン手当が出るのだが、それもPAのロンドン手当は医師のそれより随分と高いらしい。このへんの待遇の違いは若手医師が怒っている理由の大きな一部だ。大変な思いをして医師になりキャリアを積んでいるのに、自分より圧倒的に知識も経験も少ないPAが医師の真似事をしているのは本当に腹立たしい、と若手医師の誰もが思っている。)

医師の真似事というのは比喩ではなく適切な表現で、たとえばこの投稿をみて欲しい:

橈骨動脈を触れる「お医者さんごっこ」をしている写真を嬉々としてSNSに載せてしまうのがPAだ。PAは知識よりもパフォーマンスに重きをおいているようで、こんな調子なのに医師と同等の知識・能力があると言い張るとはなんとも烏滸がましい。(ちなみにこれに“Confirmed positive for palmaris longus”ー“Ah crap, turns out the patient needed an ACL repair and they were checking if they were in the 15% of the population with no palmaris longus, meaning they can’t take a graft. They’re always 4 steps ahead of us! They really are so smart”という冗談がついていた)。

PAは「医師が5年かけて学ぶ医学を、私は2年で修了した、ハードだった」と本気で思っている場合が多い(とSNSで見かけるPAを見ていて感じる)。PAは医師と同等のcompetencyがあると主張することに余念がないが、この過剰な自信は無知からきているのだろうか?

こういうのもあった:

インスタグラムに、「若い患者さんのDNACPRフォームにサインした。なんて感じていいかわからない。」と書いたり、直腸診のために患者さんを夜中に起こすべきか投票を募ったり、PAはノリが医学部2年生だ(日本のポリクリに当たる病院実習はイギリスでは医学部2年生から始まる)、とこの医師はツイートで指摘している。

それなのに、つい最近までPAが医師を騙る・患者さんに紛らわしい自己紹介をすることが日常茶飯事だった。首に聴診器をかけて”Consultant PA””Generalist Practitioners“”One of the ward team”など患者さんが医師と間違えるような自己紹介をする、医師ではないのに医師と名乗る(患者さんにだけではなく、LinkedInなどのオンラインのプロフィールでも)、などの行為に少なくない目撃証言があり、ツイッターで大炎上したので、最近「PAは『私は医師ではない』と患者さんにはっきり伝えよ」というようなガイドラインがPAを統括する団体から出た。

日本と同じように英国でも医師でない人が医師を騙る・またはそのようなふりをするのは医師法違反なのだが、私も実際に勤務先でPAがSHOを名乗るのをみたことがあるし、今も結構医師のふりをしているPAはいるんじゃないかと思う。医師を見下すような発言をしながら(これも実際に何件も目撃されている)そのじつ医師のふりをするという感覚がちょっとよくわからない。ちなみにタイトルのNoctorは Not a doctor の略である。

Physician Associatesという名前それ自体が紛らわしいので、かつての名称であるPhysician Assistantsに戻すべきという話も出ている。医師は大賛成している。

不法に処方を行うが罰されないPA

PAは処方や検査オーダーができないので、病棟や救急科で働く研修医はPAのために処方や検査をオーダーさせられることになる(そしてその処方・オーダー責任は全て研修医が請け負う)。AAは初めから終わりまで一人で麻酔をすることもあるようだ(医師は複数のオペ室を監督する)。PAがオペのアシスタントどころか一人で扁桃摘出中をしていた病院の話も明るみにでて問題になっている(外科医の中でもサービスプロビジョンにしか関心のないコンサルタントがPAに賛成しているが、若手医師は軒並み反対している)。

私が前に勤めていた病院だと、処方には紙カルテが使われていたので、PAが処方希望の薬をカルテに書いて「署名だけくれる?」という形でお願いしてきたり、簡単な病歴と共に「この画像をオーダーしてくれる?」という形でお願いしてきたりしていた。A&Eで患者さんの急変対応をしていたために病棟での処方が遅れた医師に、患者さんのID・処方してほしい薬品名を説教じみたメッセージ(「病棟の薬剤処方は基本だろ」)とともにWhatsappで送ってきたPAがいたと激怒している外科医をツイッターで見たことがあるので、電子カルテだとそういう形で医師に処方依頼するらしい。

最近話題になっているのは、PAが医療麻薬を処方した例である。この病院では4人のPAが医療麻薬を処方し、そのうち1人はPAの試験(誰もが受かる)にすら合格していないPAだったそうだ。不法に医療麻薬を処方することと、ドラッグディーラーとは、何が違うのだろうか?ドラッグディーラーは捕まるのだから、不法に(不法と知りながら)処方したPAだって法の裁きを受けるべきと思うのだが、なぜか「コンピューターの不具合」のせいにされてPAは罰を逃れているようだ。紙カルテにおける処方だと医学生でも看護学生でもやろうと思えばできてしまうのだが、そういう事例がないのは、彼らは処方をしてはいけないことを知っていてかつそれを守ろうとするある種のプロフェッショナリズムがあるからだろう。医療安全に厳しいイギリスにおいて、PAは「あり得ない」存在なのだが、あり得ていてしかも国が積極的に推進しているというのだから、二の句が継げない。

医師の手技や教育機会や就労機会を奪うPA

外科系だと、PAは処方ができないので、処方ができる外科専門医になりたい後期研修医が病棟に残らされて処方など担当しその間にPAがオペ室でオペの手伝いをするということで、PAが外科後期研修医のアシスタントというよりむしろ手術の機会を奪っているとして大変評判が悪い。

内科系でも、医師はオンコールや夜勤でへとへとになるまでこき使われるのに、PAはたくさんの外部トレーニングコースに参加できて自己研鑽の時間があるということに不満の声は大きい。

PAが伝統的にSHOの仕事だったことを奪っているので、全体的にnon-training SHOのポジションが年々減っているとされ、それもまた若手医師の怒りを買っている。(怒りの矛先が「SHOのポジション/トレーニングポジションをさらに奪っている」IMGsに向く人もおり、懸念している)

False Equivalencyに基づいて能力以上のポジションに就くPA

PAがSpRやコンサルタントのロータ(シフト表)にいるのも医師の間では大きな問題となっている。

内科系だと、北部の三次病院で小児の肝障害について入院受けいれ・電話でアドバイスをするレジストラの立場の仕事にPAが就いていたことが最近では大きなスキャンダルとなった。アシスタントのはずのPAに医師たちはいつの間にか監督される立場になっていたのだ。

ちなみに私の前勤務先のA&EではPAがコンサルタントのポジションで働いていたことがあったのを覚えている。

規制に向けて

政府は規制に向けて動き出しているが、政府のリクエストによりPAがGMC(医籍管理する団体)によって管理されることにも医師たちは非常に不満を抱えている。医師とPAの境界の曖昧さが持続するのではという懸念からだ。

GMCは100%医師から搾り取る年会費で成り立っている団体で、政府とは独立の存在のはずなのだが、今回の経過を見ているとどうもそうではなさそうだ。

イギリスはそもそも医療安全に大変厳しい国である。GMCが生まれた経緯も患者安全にあるのだが、そのイギリスがPAを医療者とみなすとは狂気の沙汰としか思えない。それを指摘するとBe Kindと言われて声がかき消される。

このポストは大きな波紋を呼んだ。GMCがPAを規制する第一歩として、Doctorsの文字を消去して、Medical professionalsと記載し、そこにPA/AAを含むことを宣言したからだ。

これまで見てきたように、そもそも医師はPA/AAをmedical professionalとみなしていない上に、英国においてはmedical professionalといえば医師を指す。それにも関わらずGMCは、PA/AAをmedical professionalsとして医師と同じ括りに入れてしまったのだ。医師へのなんたる侮辱だろう。

今やGMCはアンチ医師の団体と医師たちからみなされている。GMC設立の理念である患者安全を蔑ろにしてPAを規制に含むという決定から透けて見えるのは、政府の意向を医師や患者安全より優先する姿勢と、本来は独立して存在しているはずの政府への服従だ。GMCの尋問に遭った医師たちの自殺率の高さを見ても、医師から巻き上げたお金でプライベートの医療保険をスタッフに提供している点でも、GMCはアンチ医師団体と言って差し支えないし、この頃はGMCのいい話は一つも聞かない。反ワクチンの医師を擁護したみたいな事件もあったと思う(きちんと話をフォローしていないので気になる人は調べてほしい、確か反ワクチン医師の裁判費用を負担したとか、反ワクチン医師への捜査依頼を無視したとかだったと思う)。GMCに年会費を支払わないと英国で医療行為ができないので、我々医師には選択肢がないのだが、それでも支払い拒否の余波を恐れず抗議の一環として次のGMC会費は払わないつもりだと言っている医師もちらほらいる。

若手医師の嘆き

医学部の定員増の話が出ているが、問題は医師の数ではなくて、トレーニングポストの数だ。

若手医師は夜勤・オンコールの労働力として重要なので、NHSは若手医師の数を温存するために敢えてトレーニングポストの数を少なくして、能力のある医師がキャリアアップの階段を登れないようにしている、という話を聞いたことがある。まだNHSで働き始めて1年半だが、政府のようすやNHSのあり方を見ていると、さもありなんという感じだ。私のようなIMGsも含めると医師はかなり存在している。問題なのはトレーニングポストの少なさで、トレーニングポストがないためにコンサルタントになれないレジストラやレジストラになれないSHO、GPコースに入れないSHOなどがたくさんいる。

そんなにPAの待遇が魅力的なら医師は辞めてPAとして働けばいいじゃないか、と思われるかもしれないが、実は医師はoverqualifiedでPAにはなれない。医学部に入学したことのある人は(たとえ卒業していなくても)PAのコースには進めない。PAは医師以外の医療職経験者は諸手を広げて歓迎するが、医師はお断りなのだ。

なので、2年のコースを経て勤務開始1年の超若手であっても、PAであればGP surgeryでバイトができるのに、5-6年のコースを経て初期研修2年を終えた状態のSHOではその圧倒的経験と知識の差にも関わらずGP surgeryではバイトができない。(病院でのバイトならSHOもPAもできるのだが、PAの方が時給が高い。)

麻酔科医になりたい若手医師はポジション獲得に非常に苦労しているのに、一方でたった2年の修士課程を経たPAは卒業してすぐから麻酔科のポジションで麻酔科に専念した働き方ができる。あまりの理不尽に言葉を失ってしまう。こんな不条理がまかり通っているのが本当に信じられないので誰か理解できるように説明してほしい。

イギリス政府の的外れっぷりは日本といい勝負で本当に呆れてしまう。

まとめ

これから英国で臨床医として働くつもりなら、PAの動向は注意深く追うのがいいと思う。

それからあなたがこれから英国で患者さんとしてGP surgeryやNHSの病院を受診することがあれば、ぜひドクターの診察を希望してほしい。「ドクターに診てほしい」と言う発言は、若手医師には大変励みとなる言葉で、きっとその若手医師は嬉しくてずっとあなたのことを覚えていると思う。何よりあなた自身のためである。

何かPAの状況にアップデートがあればまた追加しようと思う。