20ヶ月目の日記2 イタリア

NHSで働き始めてからは誕生日に少し遠方への旅行をすることにしている。去年はコーンウォールで、今年はイタリアだった。ミラノ(は飛行機のためでほとんど観光せず)、ボローニャ、フィレンツェ、ヴェネチアを10日間かけて回った。

4月は雨が多くてちょっとどうかな、とイタリア人の友人には言われていたが、私の旅程では晴れが8割、雨が2割ほどで、ヴェネチアではイギリスの夏のような気候で、とても快適に過ごせた。

各都市間は電車で移動した。電車は快適だった。友人に、長距離電車は早めに予約しておいた方が良い、と聞いていたので、電車とAirBnBだけ事前に予約して、あとは直前に決める感じで旅行に行った。なので、ミラノやフィレンツェなど人気の都市では美術館に入るのに予約が必要(予約がないのにどうしても観たいなら、長蛇の列に我慢して加わるか、割高の非正規団体から購入することになる)だと知ったのが直前で、正規より少し高いチケットも何枚か買うことになった。この辺りの情報は日本語で調べると出てくるのだが、イギリスのガイドブックには何も言及がなく、日本のサイトは親切だなあと思った。トイレが綺麗かどうかも言及してあるところもとても日本のサイトらしい。

ミラノ

スリが心配だったのだがイギリスと同じ感じで心配要らなかった。空港から降りてすぐの地下鉄のエスカレーターで、右側に立っていると左側(歩いて登る人用)に私を挟むようにして立ち止まった怪しい二人組がいたが、それ以降は怪しい人も見かけなかったし怖い思いもしなかった。

イギリスのガイドブックに「旅行者はカジュアルな格好をしていることが多いが、地元民は少しおしゃれしているのが普通なので、スリ対策に少しおしゃれをすると良い」みたいなアドバイスがあったのだが、地元民と思われる人もカジュアルな格好の人が多かったように思う。時々、目を見張るほどおしゃれな男性が歩いていた(ピシッとした色物のスーツ、ブランドものに疎い私にも一目で高級品だとわかるおしゃれな靴、同じく高級そうな腕時計、髪型はオールバック、の男性たちが颯爽と歩いている)。おしゃれな女性はイギリスを含めどこの国にもいるけれど、ここまでキメた男性はなかなか見かけないので、ミラノだなあと思った。

飛行機の都合でミラノに着いただけであまり時間がなく観光はしていない。友人からたくさんおすすめのレストランやバーを聞いていたけれど全然行けなかった。最後の晩餐を見たかったのだが、それもチケットを事前に買っておらず見られなかった。

ボローニャ

少し田舎の観光地という感じ。ミラノより時間の流れが穏やかだと感じた。

行って良かったところ:

  1. Santuario Madonna di San Luca
    • 山の上にある教会で、頂上まで続く長い回廊を歩く。
  2. A.C. Vecchietti
    • 高級文房具のお店。眺めるだけで楽しい。店主のおじさんがいい人で、私の拙いイタリア語に付き合ってくれた。
  3. Via Pescherie Vecchie
    • 狭い通りにバーや生鮮食品のお店が所狭しと並んでいる。ボローニャの中心、Piazza Maggioreに接続している通り。
  4. Saràvino
    • タケさんという日本人の店員さんがいた。名札とアクセントから日本人に違いないと思って話しかけたらやっぱりそうで、久しぶりに日本語が話せて楽しかった。ボローニャに駐在でくる人たちもよく利用しているお店らしい。Saràvinoのあるこの通りは、地元の人が飲みに行く通りのようなので、ボローニャにきたらぜひこの辺にも飲みに行ってほしい。(3のVia Pescherie Vecchieは観光客が多いそう。)
  5. Senza Nome
    • 聴覚障害者である店長が聴覚障害者としてイタリアで初めて作ったバーなのだそう。壁に吊られている飲み物のチケットを渡してお金を払うシステムだった。Saràvinoの通りにある。とても気に入ったのでTagliatelleのTシャツまで買ってしまった。飲み物やパスタの種類にまで手話があるとは知らなくて、雰囲気が良かったのはもちろんのこと、そういう知らない世界が少し覗けたという点でたまたま通りかかって良かった。
  6. Ahimè
    • 季節の野菜を使ったイタリア料理のお店。イタリア料理だけれどベジタリアン料理が多い。多分この旅行中に食べたものの中で一番美味しい料理が振る舞われた。

他にもかわいいカフェやpasticcerieにちょこちょこ寄って紅茶を飲んだり甘いものを食べたりしたのだが、名前は覚えていない。

Santuario Madonna di San Luca

イタリアは全体的に(よほど観光地の中心に行かない限り)カフェやバーが安くて、カフェ巡りや Bar crawlが気兼ねなく楽しめた。

この宮崎駿や彼の作品についての本は結構どの本屋さんでも平積みまたはウィンドウに配置されていた。一番左の本は簡単すぎで、中央奥のは難しすぎたが、中央の本は私にちょうど良いくらいの難易度だったので買ってしまった。本屋さんの袋に印字されていた格言が素敵なので見てほしい:Nessuno è mai solo con un libro in mano. (Roberto Robersi). Leggere libri è il gioco più bello che l’umanità abbia inventato. (Wislawa Szymborska).
Senza Nomeのチケット

<<The most important thing in the world is knowing how to be self-sufficient>>

フィレンツェ

どこよりも観光客が多かったように感じた。イギリス英語もよく耳にした。

半日の無料ツアー(チップ要)に参加して、建物にまつわる歴史を聞けた日が一番楽しかった。

ツアーガイドに聞いた本物のジェラートの選び方:
1.ジェラテリアとして存在している(カフェ併設ではない)
2.アイスクリームのガラスが店の外に面していない(本物のジェラートは溶けやすいので、外側に面しているとすぐに溶けてしまう)
3.アイスクリームがもりもりにディスプレイされてない(本物のジェラートは溶けやすいので、もりもりにディスプレイされるとすぐに溶けてしまう)
4.ピスタチオが緑すぎず、やや茶色をしている
5.冷凍庫から出すとすぐ溶ける

カフェではインド訛りの強い英語を話す人が店員さんとのコミュニケーションに苦労していたので通訳してあげて、自分の拙いイタリア語でも通訳できるレベルなのかと少し嬉しかった。インド訛りの英語が懐かしく感じた。

  1. Academica Gallery
  2. Uffizi Gallery
  3. Museo Galileo

ヴェネツィア

今回の旅行で訪れた4都市の中で一番気に入ったのがヴェネツィアだった。去年の誕生日にコーンウォールに行った時に思い出したけれど私は海がすごく好きなので、海辺のかわいい街な上にいかにもイタリアという感じの路地が張り巡らされた風景にどれだけ歩いても飽きなかった。ヴェネツィアでも半日のツアーに参加した。

  1. sullaluna libreria & bistrot
    • 絵本が読めるバー
  2. Vino Vero
    • 占い師みたいな風貌の店員さんに今日の気分を答えると、気分に合わせておすすめのワインを選んでくれるバー
  3. Codex Venezia
    • 日系ブラジル人で、20代の頃にイタリアに来たという画家のおじさんがやっているお店。私は小さなじゃばら折りの似顔絵集を買った。
  4. Osteria Giorgione da MASA
    • ヴェネツィアの食材を使って和食を作っているお店
  5. El Sbarlefo
    • 揚げ物が美味しいバー
  6. Squero di San Trovaso
    • 造船場
  7. Ponte dell’Accademia
    • コンテストで優勝した橋を作り始めるまでの間仮設でたった20日ほどで作られた木の橋だが、あまりに美しいのでそのまま使用されているそう。
  8. Scala Contarini del Bovolo
    • ヴェネツィアを一望できる展望台
  9. Ss Giovanni e Paolo Hospital – Museum of Pathological Anatomy
    • 病院に併設されたヴェネツィアの医学史博物館
  10. Murano, Burano – 本島から船で行ける小さな島

イタリアの長距離列車はどれも快適だった

犬の写真を撮らせてください/犬を撫でてもいいですか、というと大抵の飼い主は笑顔で承諾してくれた上に、犬の名前や年齢や健康状態や誕生日について教えてくれる。犬をきっかけに地元の人たち(や同じく旅行中の人たち)とイタリア語で話すのも今回の旅行の楽しみの一つだった。

猫がいるのが売りの本屋さんなのに猫はいなかった

NO WAY – STRADA CHIUSA が(英語が間違っていて)かわいい

絵本を読みながらお酒が飲めるバー

この絵本は100%読めて嬉しかった

これは80%くらい

これは難しすぎて読めなかった。マルコポーロの話。
語彙の勉強になるので買おうかものすごく迷って別のにした絵本。

とても語彙の勉強になる手の本
これを見て、そういえばパチニ小体ってイタリア人の名前ぽいなと思い調べたらパチニ先生はやはりイタリア人だった。

このへんはものすごく混んでいたのだが、中心を少し外れると全く問題なかった。

ヴェネツィアは車が入れないので、消防船、警察船、貨物船などあらゆる車の船バージョンが存在していて、旅行中は霊柩船も見かけた。

イギリスではオックスフォードとバースに(他にもあるのかもしれない)この橋に着想を得た橋がある

training/non-training jobの違いより病院選びが大事

かつて書いた記事に少し修正を入れたとおり、少なくとも内科系でNHSに勤務する場合には、training jobかnon-training jobかの括りよりも「どこで働くか」がサポートを受ける上で圧倒的に重要だ。今年からFoundation Yearの医師は業績やテストの成績に関わらずUK全土どこに割り当てられるかわからない仕様になったようなので、それも踏まえると、ギャンブル要素の強いtraining job (Standalone FY2など)よりも、ある程度自分の選好を組み入れられるnon-training jobの方がいいのではとすら思う。

どうも口コミを色々見ていると、私がNHS1年目の時に耳にした”FY1-led ward round”(研修医1年目主導の回診)は外科ではそんなに珍しくないのかもしれないようだ… が、これについては日本で初期研修を終えてからやってくる医師に関してはあまり心配いらないだろう。日本の初期研修はイギリス準備に良い制度なので、その間に色々勉強しておくと、あとで未来の自分や一緒に働いている未来の同僚にその知識量を感謝されるかもしれない。

あと外科系は全体的に評判が悪い傾向にあり、内科系と比べていじめや態度の悪い上司の話が目立つ。外科トレーニング中に症例を得るのはイギリスでは多分日本より難しいので、外科系でイギリスに来たい人はその辺も渡英のタイミングと合わせてよく考えた方がいいと思う。(ただし日本と比べると多分外科でもQOLはこちらの方が良いし、プライベートの外科病院もたくさんあるので、イギリスの方が収入も高い。)

私がIMTのポジションのランキングをつける時にhttps://juniordoctors.co.uk/ で見かけた冗談のセンスのある口コミや空恐ろしい口コミを参考に書いておく。

大学院の頃のフラットメイトが初めて働いた病院で病棟スタッフに随分といじめられて(無視、指示を聞いてくれず仕事にならない等)泣いていたことがあり、彼女は私と違ってそうそう弱音を吐かないのにその彼女を泣かせるなんてNHSはなんて恐ろしいところだろう…と思っていたのだが、期待通り(?)彼女の勤めていた病院の評判はものすごく悪かった。口コミが悪すぎるところはまあその通りの労働環境だと思って差しつかえないと思う。

Good senior support by SpRs who are generally miserable but consultants are very unsupportive and extremely toxic/borderline bullying in some subspecialties (Paeds and esp Onc).

→アカデミックな有名病院のレビュー

This was my first FY1 rotation at the hospital that is rightfully nicknamed “Death Valley Hospital. (…) The ward was notoriously known to be a dumping ground of complex patients that wards did not know how to deal with.

Consultants are supportive but rarely present. Some consultants give incredibly outdated medical advice, are inappropriate/rude, do not understand that you’re human and can only work at a certain pace, and are just not safe (they don’t read notes fully or make themselves aware of the patient fully – so it will be up to YOU to let them know of any issues THERE AND THEN).

The hospital has changed significantly in the last year. Inherited debt from local hospitals means that it now is scrimping on employing doctors (Trust Grades etc) for known vacancies.

Absolute dirt. I phone porter to take ammonia level to lab on ice Porter flees hospital with sample and sells on dark web for high salary The dishonourable cabal of rascals running this place refer me to GMC over stolen blood tubes Filty dirt!

THE worst rotation I have ever been on. Work at 120mph every single day to do the bare minimum due to understaffing and finish 6-7pm everyday (1-2 hours late).

If you are a medical student and actually are dumb enough to choose this hospital then you deserve to suffer. This place was rated in the GMC survey as one of the lowest rated hospitals in the country and no surprise.

If you have a choice at all, do not train here. Having just finished foundation, it is true to say the entire hospital is farcical. Yes the people throughout are very nice, but the rubbish systems (…) make — a miserable place to work.

There are 9 online systems for different tasks and results (maybe more?) Which all require different passwords and logins. And are often broken or offline.

→これは私が1年目に勤務した病院と同じ。こういう病院もまあまああるようだが、IMGの我々にとって汚い手書きの英語を読むのは大変にストレスのある仕事(1年くらいかけて段々と読めるようになる・まあ読めるようになると日常生活でも役にたつことがある)だし、日本のカルテに慣れているとイギリスのこういうのは耐え難いほどの苦痛なので、勤務先を探す時には一応電子カルテ事情も調べておくといいかもしれない。

This SHOULD NEVER BE a training hospital. There is no support, no training, no teaching provided.

→こういうところで働くのはやめた方がいい。トレーニングジョブでもノントレーニングジョブでも関係なく大変な思いをする。

As SHO forced to carry reg bleep on nights and weekends. Minimal/ non-existent senior led ward round. Poor staffing levels leaving SHOs to fend for themselves majority of the time.

Very poorly supported, consultants saying they are ‘cardiologists’ and almost refusing to see general medical patients. Had to do ward round alone on my first day, no introduction no orientation to the ward and no morning handover of the patients.

Bullying, Poor leadership & No support. Today an F2 died. Those that know her said that a consultant bullied her. Dead less than 6 weeks after starting F2, emails sent around telling her she should jump off a building, not at work in the 2 weeks before her death.

At — you are just a line on the rota! No one cares if you live or die- as long as gaps in the rota are filled

Avoid!!! The bullying is relentless and openly tolerated. They’ll blame mental health for any suicides instead of the toxic culture they’ve created. Do NOT apply.

I start work at 8am, I arrived on the ward at 7:45 A nurse complained that she was waiting for discharge summaries and TTOs, At 7:55 the reg arrived- he greeted me by saying Oi idiot, I hope the notes are preped, I want to go to theater not waste time on ward rounds At 8:20 the consultant arrived and said-Oh I have to do the ward round with dumb, and dumber-lets get this over before I punch someone.

Cons – very angry Consultants who blame you for things that are not your fault

→これは個人的に経験があって、今思い出してもあまりの理不尽に腹立たしい。

Half your time is wasted trying to find a space to see patients in minors-whereas in majors you have the joy of trying to examine patients in trolleys in the corridor where patients are packed like sardines. Zero privacy for the patient, & a horrible experience for doctors too

void!!! The bullying is relentless and openly tolerated. They’ll blame mental health for any suicides instead of the toxic culture they’ve created. Do NOT apply.

Rated as inadequate by the CQC, bullying highlighted by the CQC. Doctors just starting their career bullied to death Do not train here if you value your GMC registration. Consultants are always threatening to report junior doctors to the GMC, upper management will blindly support the consultants. Investigations into complaints are a kangaroo court, and doctors who raise patient safety concerns will be labelled as vexatious. Teaching does not exist. There are a few good consultants, but they do not stand up to the consultants who are bullies.

We lost a doctor to suicide. She was suspended after a campaign of bullying from the renal consultants, and HR Junior doctors have been sharing details of the horrific bullying emails she received. The hospital is acting like nothing has happened.

これを見てイギリスで働くのをやめようかと思った人もいるかもしれないので、一応評判のいい病院の評判へのリンクも貼っておく:Royal United Hospital Bath, Worthing Hospital, Royal Berkshire Hospital, Homerton University Hospital

↓IMTプログラムの評判

病院ごとのランキング

20ヶ月目の日記1 パレスチナ人男性のハンガーストライキなど

複雑な背景を持つひとたち

私は病院の倫理委員会のスタッフで、この間とても時事的なケースを経験した。個人情報なので胸の内にしまっておこうと思ったのだが、実は結構有名なケースのようで、ツイッターで(病院ではなく患者さんの支援団体に)公表されていた。ネットに出ている情報だけで少しこの男性に触れたい。

この男性は、イスラエルとパレスチナの戦争(イスラエル人によるパレスチナ人の殺戮というべきだろうか)が始まった頃にハンガーストライキを始めた。倫理委員会が握っていた情報にはなかったのだが、記事によると、彼の生き別れた妹がパレスチナにおり今回の戦争で命を落としてしまったのが、ハンガーストライキの契機となっていたようだ。「ハンガーストライキをしている人が『死にたい』『死んでも良い』というとき、その意見はautonomousなのか」「過去・現在の大きなトラウマが意思決定に影響しているとき、その意思決定はautonomousなのか」など、倫理委員会では主にautonomy関連の議論が多かったように思うが、ネットに出ている情報以上に色々と複雑な背景があり倫理委員会での意見はあまりまとまらなかった。あまりまとめないで意見だけ出すのが当院の倫理委員会のスタイルなので、それはそれとして、最終決定は担当医・担当科及び精神科医に任されることとなった。

その後、自主的にハンガーストライキをしている人の経過観察のために冬の逼迫している病院のベッドを使うわけにはいかないという事情もあり、彼は退院した。退院後にどうなったかを私は知っているのだが、どうもネットには追伸記事がないので、ここには書かない。

私は西ヨーロッパを「世界の良心」だと思っていた。きれいごとでもいいから、人権や倫理を建設的に議論し高々と掲げてくれる西ヨーロッパに他のどの地域よりも信頼があったし、それが西ヨーロッパ地域に引っ越したい理由だった。イスラエルとパレスチナの戦争はその信頼を根幹から揺るがしたように感じる。戦争が始まった当初、欧州連合の委員長が「私は徹底的にイスラエルを支持する」みたいな(個人的な)声明を出した時も自分が目にしていることが信じられなかったし、パレスチナ軍による残忍な行為がこれだけ明らかになっている今ですらイスラエル支持を表明している人たちを見ると、世の中には考え方が根本的に違っている人たちがいるのだということをまざまざと思い知らされる。

悲しいことだが日常になってしまったガザからの陰惨なニュースがまだ日常でなかった頃に、この男性の話が倫理委員会に届いて、「ああイギリスに住むと世界がこんなに近いのだな」と思った。

イースターホリデーで何をする?という話を同僚たちとしていた時も、「世界がとても近い」と感じた。ミャンマー出身の同僚は「帰りたくても帰れない」と言っていた。どうも、クーデターで軍事政権になって以来、一旦一時帰国してしまうと出国するのに特別な許可証が必要とかで、それが発行されるのに数ヶ月かかることもあるらしい。いつかは帰国したいけれど今はまだ無理だ、と寂しそうだった。シリア出身の同僚は、「ヨルダンまでは飛行機で、そこからはタクシーに乗る」「シリアはWifiが弱いから電話とかは無理。もし本当に連絡が途絶えたら死んだと思って」と笑うに笑えないジョークを飛ばしていた。IMGの中にはこのように母国に複雑な事情を抱える人が少なからずいる。

チェダーゴージ

Cheddar Gorge (チェダー峡谷)に行った。日帰り旅行に人気のところで、名前の通りチェダーチーズ発祥の地だ。National Trustの一部でもある。

20ポンドの入場料には、丘と、2つの洞窟と、2つの博物館の入場料が含まれる。丘だけでいいなら入場料を払わなくても登ることのできるルートがあるのだが、初めて行くならチケットを購入するのがおすすめだ。

春先のハイキングは、急な天候不順(1日に何度も晴れたり雨が降ったりを繰り返す)やぬかるみがつきものなので、汚れても良い滑りにくいハイキングシューズや防水パーカーの持参をおすすめする。(私が行った時も、下の写真を撮った20分後くらいに大雨になり、それから1時間後くらいにまた晴天が戻ってきた。)

犬にも優しい地域で(イギリスの田舎町はドッグフレンドリーを一推しポイントにしている観光地がたくさんある)、あらゆる場所に犬がいた。

チーズ入りスコーンとチェダーチーズとチャットニー

この音声ガイドを持って洞窟に入る。洞窟ガイドはまるでIELTSのリスニング問題のようだった。

しばらく車に乗っていなかったのでインディケーターが故障(!)し車内にカビ(!)が生えていたが、カビはきれいにアルコール除菌して、インディケーターはしばらく乗っていると元にもどった(動き出してから気がづいたので、予定地ではなく車の修理ガレージに向かって走っている途中で)。古い車は定期的に乗っていないとこういう不便がある。

イギリスは春になり、日帰り旅行の楽しい季節になったので、車が壊れないように定期的にハイキングに行きたい。

IMTのポジションを得た

前回の続き。幸運なことにIMTのポジションにマッチした。

ロンドンから車か電車で2時間くらいまでと決めて、KSS (Kent, Surrey, Sussex), TV (Thames Valley), EoE (East of England), Severn, Wessex 内の仕事を600件くらい順に並べた。かつて同じくらいのランキングだったというレジには400件くらい並べれば大丈夫と教えてもらったが、無職になること(=また例年通り就活を頑張らなくてはならない)と、不本意ながらトレーニングジョブがあるのとどちらが良いかを天秤にかけて、結局車で3時間の距離にあるBristolやPortsmouthや評判が非常に悪い東の方のKSSの病院も含めて600件ほど並べることにした。

過去2年のnon-training jobの経験を踏まえて、あまりに評判の悪いところや住民が特定の民族・人種に偏っている地域はできるだけランクを落として(現住所のバースはとてもきれいなところだけれど住民が白人英国人ばかりですこし居心地の悪さを感じる)、ロンドンをはじめとするあらゆる人種や民族の人がいる地域やリベラルな人が多そうな地域から順に書いた。もちろん病院に対するオンラインでのレジデントドクター(ジュニアドクターに代わる言葉としてBMAが提唱しはじめた)からの評価も加味したし、レジやコンサルタントからの意見も参考にした。土地勘があったり病院の事情をわかっていたりする人の話は貴重だ。

こんな感じで、まずはエクセルファイル(ここからダウンロードできる)から大まかに都市名を抜きだし、ブロックごとに順位を決めた。その後、エクセルファイルに戻って各ブロック内の仕事を順に並べた。ロンドンは病院がありすぎるのと、私の順位ではマッチする可能性が低いのとで、あまり真剣に考えないでほぼエクセルファイルのままの順位で提出した。各ブロック内では、自分が興味のある科(腫瘍内科、緩和ケア科、呼吸器内科)と、レジになる前にやっておきたい科(循環器内科)のローテがあるポジションを優先的に並べた。

結果、Worthingという地域の病院とマッチした。緩和ケアがあるポジションは地域限定だと非常に少ないので、このポジションのオファーが来てとても嬉しい。病院を転々としなくて良いこと、Brightonから車でも電車でも20分の距離にある街なので憧れのBrightonに住めることもまた嬉しい理由になっている。

(ちなみに類を見ないほど評判の良い現勤務先RUH↓は、この病院だけでのトレーニングポジションというのはなく、少なくとも車で30-40分は離れた複数の病院を転々とするのが必須だ。車がないとなかなか厳しいと思う。選択肢を広げるためにも、イギリスでの研修を考えている人は自動車免許は取っておいた方がいい。)

Accept with Upgradeでオファーを受けた。IMTの面接を受けた人の中には、小児科や産婦人科や放射線科やGPや麻酔科など、全く別のコースを検討している人も多くいるようで、そういう人がマッチングから抜けると、ランキングの高い順にその空席を埋めるように自動的にオファーがアップグレードされる仕組みになっている。

できればロンドンかオックスフォードがいいなあと思っていたが、ブライトンはいい街だし、コレッジへの所属がない今(アラムナイカードでコレッジ内を散歩したりアラムナイイベントに参加することはできるが)オックスフォードに住むのは疎外感があって微妙かなと思ったりもして、これはこれでよかったように思う。当初Worthingとマッチした時には少し微妙な気持ちだったのだが(なんでBrightonじゃないのかと不満だった)、よく調べるとここ数年でBrightonの病院はガラリと様相が変わっていて、レジデントドクターの自死や複数の患者さんの不審死に警察が介入する事件があったとかでレジデントドクターからの評判が随分と悪く、「Brightonの病院はやめておけ、Brightonに住みたいならWorthingの病院がいい」みたいなアドバイスがちらほら目についたので、自分の心身の健康を一番に考えている私としてはこれ以上のポジションはないんじゃないかとも思い始めている(なのでAccept with UpgradeをAcceptに変えてしまおうか悩んでいるところだ)。アップグレードは48ー72時間ごとに起こるとかで、私の同僚のIMT2は「僕は最終的に4回もアップグレードした」と教えてくれた。悩んでいる間にも、上位にランクした別の病院にマッチしかねないので悩んでいる余裕はないのだが、まあ次の3年の仕事・居住地に関わる大切な決断なので踏み切るのはなかなか難しい。

これからこのアップグレードが1ヶ月かけて行われるので、ここからまたアップデートがあったらこの記事に追記したい。

21/3/24 追記:病院の選択についてたくさんのレジやIMTに話を聞いたのだが、よく聞くアドバイスは「住みたいところにすればいい」というもの。IMTはどこに行っても雑用係で大した違いはなく心身に悪影響の仕事なので、家族や友達と近い地域や住みたい街にするのが一番だ、と3人に1人くらいの割合で助言される。

24/3/24 追記:22/3に届いたメール。私は1320位で、私のポジションはKSSにある。

The lowest rank to be made an offer at the moment is 2053. We have looked by region and the lowest ranked candidate currently offered for each region is below; we are sorry but we are unable to provide more granular information within a region:

East Midlands - 1796
East of England - 1836
KSS - 1773
London - 824
North East - 1851
North West - 1829
Northern Ireland - 2053
Scotland - 1759
South West Peninsula - 1880
South West Severn - 1355
Thames Valley - 1198
Wales - 1963
Wessex - 1694
West Midlands - 1734
Yorkshire and the Humber - 1950

8/4/24 追記:最後のアップグレードでブライトンにマッチした。その前にWorthing内の別のポジションにアップグレードしたので、私は合計2回のアップグレードを経験した。ブライトンの病院の評判はネットでは非常に悪いのだが、知り合いの口コミで全然問題ないみたいな話を聞いたのでWorthingより上位にしていたらマッチした。大丈夫かな…という気持ちと、可愛くて多様性のある街に住めて嬉しいという気持ちで複雑な思いだ。

下のメールは4月3日に送られてきたもの。昨今のNHSやResident Doctorsの状況を反映してか、例年と比べてマッチングから抜けた人がずいぶんと少ない。

To reconfirm, the lowest rank to be made an offer at the moment is still 2135. Regionally, the lowest ranked candidate to have been made an offer is below. Please note that each region has areas which are more or less popular and so this is only indicative of the least popular part of that region.

East Midlands - 1903
East of England - 1940
Kent, Surrey and Sussex - 1886
London - 981
North East - 1959
North West - Mersey - 1877
North West - 1941
Northern Ireland - 2135
Scotland - 1883
South West Peninsula - 2015
South West Severn - 1355
Thames Valley - 1260
Wales - 2066
Wessex - 1905
West Midlands - 1945
Yorkshire and the Humber - 2014